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2011年5月アーカイブ

前号では腸のメカニズムや便通異常が体にとってどのような悪影響を及ぼすかをお話いたしました。今回は、快便を得るための方策について、松生恒夫(まついけつねお)氏の『「腸ストレス」を取り去る習慣』を参考にしながらお話いたします。
正常な便通とは?
 毎日排便がないと便秘症だと思っている方が多いと思いますが、排便が毎日なくても腹痛や腹部膨満感などの症状がなければ、便秘症とは言いません。それでも症状がなくても1週間も排便がない状態は体にいいはずがありません。前号でもお話いたしましたが、大腸は解毒器官としての役割も持っているため、毒を含んでいる便がいつもでも体内にあるのは良くありません。いったい、正常な便通とはどういうものなのでしょうか。
 朝起きると決まってすぐに排便のある人、食後に毎回排便がある人、2~3日に1回排便のある人、様々と思います。便秘傾向と定義される状態は1週間に1~2回、あるいは1週間に1回あるかないかとされます。一方、下痢傾向とされるのは1日5回以上です。ですから、排便回数が毎食後毎の1日3回、1日1~2回、2日に1回、2~3日1回はすべて正常と言えます。正常な便の性状とは、柔らかいソーセージ状あるいは蛇状の便(普通便、表面にひび割れがあってもOK)、硬便が集合したソーセージ状の便(塊便)、排便が容易なやわらかく小塊状の便(軟便)、これらは正常範囲です。一方、分離した硬い木の実の様な便(ウサギの糞状)は便秘傾向であり、ふわふわした不定形の便(泥状便)や水のような便(水様便)は下痢傾向の便です。
停滞腸とは何か?
 前述したような正常な排便回数、便の性状も正常であるのに、「お腹が張る」、「残便感がある」と訴える患者さんは大変多いと思います。松生氏はこのような大腸の状態を『停滞腸』と呼んでいます。腹部を打診するとタヌキのお腹のように「ポンポコ」と音が鳴って、太鼓のような腹という意味で医学的には「鼓腸」とも言います。このような停滞腸の患者さんに大腸内視鏡検査をすると、腸に動きがみられません。通常は蠕動運動によって大腸には不規則な動きがみられるのですが、停滞腸の患者さんの内視鏡検査では、緊張のないだらっとした大腸の中を進んでいる感じがします。検査後には挿入した空気が抜けづらいため、腹痛や腹部膨満を訴えることが多い印象です。
 停滞腸の原因としては、朝食を抜く食生活や、無理なカロリー制限のあるダイエット、特に炭水化物抜きのダイエットなどで栄養バランスが崩れ、食物繊維が不足している事が一番の原因です。この他、運動不足やストレスも原因になります。
停滞腸の診断チェックリスト
 停滞腸の診断には大腸内視鏡検査を行って、大腸の動きを見るのが一番ですが、ここでは松生氏の考案したチェックリストを紹介します。
①朝食は食べないことが多い。②野菜、果物、きのこや海藻は食べることが少ない。③納豆はきらいである。④料理にはオリーブオイルではなく、サラダ油を使っている。⑤魚より肉を食べる。⑥水分を取ることを控えている。⑦外食やコンビニ食をよく利用する。⑧お酒を飲み過ぎることが多い。⑨現在ダイエットをしていたり、過去にダイエットをしたことがある。⑩トイレに行きたくなっても我慢することがある。⑪下剤を1年以上使っている。⑫運動不足である(週2時間以下)。⑬睡眠時間は1日6時間以下である。⑭ストレスがたまる職場である。⑮食べ物やエアコンで体を冷やすことが多い。⑯猫背など姿勢が悪い。
 0~3個:正常です。4~8個:生活が停滞腸に傾いています。9~13個:腸が危険信号を発しています。今すぐに腸の動きを良くする生活習慣を始めましょう。14個~腸は最悪の状態でほとんど動いていません。重症の便秘や腹部膨満感など様々な症状が出ていると考えられますので、医療機関を受診しましょう。ご参考にして下さい。
腸の動きを良くする生活習慣、食事療法
一、朝食を必ず食べること
朝食イメージ.jpg 
現代の若者は、多忙やダイエットなどを理由に朝食を抜いて学校に行ったり、仕事に出掛ける人をよく見かけます。前編でもお話した通り、朝食を摂取することで「大蠕動」が誘発され、排便が促されるのです。また、朝食を摂取することで腸に自然なリズムが生まれるのです。朝食を摂取しないことは、腸のリズムを乱す一番良くない習慣といえます。固形物が摂取できなければ、腸の動きを良くするジュースを摂取してもいいと思います。松生氏のお勧めのヨーグルトバナナジュースを紹介します。バナナ2分の1本、豆乳100ML、ヨーグルト100gをミキサーにかけて、ハチミツ大さじ1を加えて出来上がりです。ヨーグルトにはビフィズス菌が含まれ、バナナと豆乳とハチミツにはビフィズス菌を増殖させる作用があるオリゴ糖が含まれているため、腸を活性化するジュースといえます。
二、食物繊維は不溶性と水溶性をバランス良く
 食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。前者は水に溶けない食物繊維で、セルロースなどが多く含まれるレタスやキャベツなどの食材がその代表です。後者は水に溶ける食物繊維のことで、昆布やわかめなど、低分子アレルギン酸ナトリウムの多い海藻類や、リンゴなど熟した果実に多いペクチンを含む食材が代表です。
 食物繊維というと「生野菜」や「サラダ」というイメージが強いためか、現実には不溶性食物繊維ばかりをせっせと摂取しているケースが多いようです。ところが、不溶性食物繊維は水に溶けないため、水分を多く取らないと便が硬くなってしまったり、腹部膨満感が強くなってしまう場合があります。大事なのは両者をバランス良く摂取することです。「不溶性」対「水溶性」は2対1に取ることが大切と言われています。実際的には、野菜ばかりではなく、海藻類や果物からも繊維を摂取すようにすれば良いと思います。
三、1日25g以上の食物繊維を
 厚生労働省は、健康な生活を維持するために成人女性で1日あたり20~21g、成人男性では26~27g以上を取るように勧めています。ですから1日25g以上を目標にするのは妥当でわかりやすいと思います。現代日本人の実際の食物繊維の摂取量は1日平均14gで、20代女性に至っては12gという少なさです。ですから、1日25g以上を達成することはそう簡単ではありませんが、停滞腸になっている方では可能な限り目指す数字と思います。
ワンカップ.jpg 松生氏は食物繊維の量を計算するのに簡便な「ワンカップ法」を紹介しています。これは野菜や果物など各種の食材を200MLの計量カップの中に入れて、おのおのの重さを測定し、そこから食品分析表を用いて食物繊維の量を測定したものです(右表参照)。例えば生のゴボウを乱切りして200MLの計量カップに入れると80gの量になり、そのうち水溶性繊維は1・8g、不溶性繊維は2・8g、計4・6gの繊維が含まれているとわかります。この表にはゴボウから始まって12種類の野菜が挙げられています。試しに、この12種類の野菜を表の切り方で200MLの計量カップに入れて、そのすべてを摂取したとします。表から計算してみると、21・8gになりました。1日25gの食物繊維を摂取することがいかに大変かがわかります。野菜や海藻だけでこの量を達成することが難しそうな方はファイブミニ(大塚製薬)を利用するのがいいかもしれません。1本100ML中に6gの食物繊維が含まれていますので、補助的に使われたらいかがでしょうか。ちなみにSEIYUさんでは、レジ袋なしで96円です。
四、マグネシウムの豊富な食品を積極的に
 お医者さんが便秘症の方に酸化マグネシウム(製品名ではマグラックス、マグミット、カマ)をよく投与することからも分かるように、マグネシウムは便通を良くするミネラルです。マグネシウムには水分を腸管に引っ張ってきて、便を柔らかくする作用と、腸管の動きを良くする作用があります。その他にマグネシウムには「体温や血圧を調節する」「筋肉の緊張をゆるめる」「細胞のエネルギー蓄積・消費を助ける」など、体の代謝に必要な働きも持っています。日本人はコンビニ食や外食の普及で、マグネシウムの摂取量がカルシウム以上に不足していると言われています。
 マグネシウム含有量が多い食品として「にがり水」がよく知られていますが、塩分が多く血圧を上げてしまうことが心配されます。マグネシウムの豊富な食材として、昆布、ホウレン草、ひじき、玄米、納豆、カキ、かつお、ゴマ、干し柿、さつまいも、落花生などがあります。これらを1日最低1品は食べるようにしましょう。
五、朝食にオリーブオイルを
 オリーブオイルは、腸を動かす速効性に優れています。朝食の時パンにつけたり、サラダに加えて摂取するといいと思います。オリーブオイルをよく摂取する地中海地域では、大腸癌や潰瘍性大腸炎、クローン病といった炎症性腸疾患が少ない事が疫学的に知られています。オリーブオイルに含まれている豊富なポリフェノールやビタミンEといった抗酸化物質が、癌や生活習慣病などの病気の発症を抑えているものと考えられます。便通を良好にして、病気の予防にもなるオリーブオイル(松生氏は高品質のエキストラ・バージン・オイルを推奨)を朝食時に積極的に摂取しましょう。
 さて、今回の快便シリーズは2回に渡ってまとめるつもりでしたが、紙面が足りなくなってしまいました。今回は中編として、次回に完結することにいたします。

 

【院長 前山浩信】

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