メディア媒体が脳を脅かす~中編~ 院長&スタッフブログ | 医療法人すずらん まえやま内科胃腸科クリニック

院長&スタッフブログ
まえやま内科胃腸科クリニックWebサイトへブログトップヘ
トップページ > 院長&スタッフブログ > > メディア媒体が脳を脅かす~中編~

メディア媒体が脳を脅かす~中編~

 今回も『脳内汚染』という本から、メディア媒体が脳に及ぼす悪影響について紹介いたします。前編ではテレビの普及によって世界的に犯罪が増加したこと、ゲームやビデオが子供達に暴力を学習させ暴力に対する感覚低下を招いているということ、子供達に善か悪かという二分法的思考や悲観的な思考を植え付けているということなどをお話しいたしました。今回も、この本で大切な部分をかいつまんでお話しいたします。
子供部屋に侵入した麻薬
 ゲームの恐ろしいのは、麻薬にも匹敵した嗜癖(しへき)性であると著者は述べています。1998年権威ある科学雑誌『ネイチャー』に掲載された論文が紹介されています。ビデオゲームをプレイした時の脳内のドーパミンの放出量を調べたところ、コカインや覚醒剤が投与された時のドーパミン増加量に匹敵することが分かりました。ドーパミンとは気持ちいいと喫煙イメージ.jpg感じる脳内モルヒネの一つで、喫煙におけるニコチンの作用で脳内に多量に放出される物質です。麻薬患者が麻薬から離脱できない、喫煙者がなかなかタバコを止められないのと同様の嗜癖性が、ゲームにはあるのです。私にも経験があります。中学3年生の時に趣味であった天体観測のためにパソコンを買ってもらいました。このパソコンで、当時ローリングプレイゲームの走りであった『ザナドウ』というゲームにはまり、夜更かしをしてゲームに興じていたことを覚えています。受験生でもあったのでこれはいけないと思い、必死の思いでゲームを封印しましたが、この時の辛さは私が30歳頃に果たした禁煙と同じ感覚だったように記憶しています。
 ゲーム依存が大きな拡大を遂げた理由の一つとして、保護者の側に、テレビやビデオの長時間見過ぎることへの警戒心はあっても、ゲームに対しては比較的警戒心がなかったことを挙げています。確かに今でも、子供達へのクリスマスや誕生日プレゼントの重要な候補は、ゲーム機器やゲームソフトですね。ゲームが二十年前と同じ技術水準で、ほどよく飽きてしまうものであればいいのですが、コンピュータ技術の急速な発展により、今やゲームは極めて高いリアリティと刺激に満ちた仮想世界を現実のものとしています。ずっと飽きが来ないほどにワクワク興奮する時に脳内で起きていることは、麻薬的な薬物を使用している時や、ギャンブルに熱中している時と基本的に同じことなのです。子供達にコカインや覚醒剤をプレゼントする親はいません。ところが実際には、麻薬的な作用を持つ「映像ドラッグ」を子供達にプレゼントしているのかもしれないと、この著者は警笛を鳴らしています。
ゲーム開始年齢が低いほど危険!
 寝屋川調査では、小学校に上がるまでにゲームを始めた子の割合が二四%、小学校一、二年に始めた子の割合が四五%で、小学校低学年までに全体の七割近い子がゲームをするとの結果が出ています。ゲームを早く始めた子では、中学になっても長時間ゲームをする傾向がみられ、また、ヘビーな依存症状がみられるケースでは小学校に上がる前にゲームを始めた子が多いとの結果も出ています。さらに懸念されることは、ゲームを早くから始めた子では、現時点でのゲテレビゲーム②.jpgーム時間に関係なく、様々な問題点がより強くみられると指摘しています。「あまり考えずに、危険なことをしてしまうことがある」、「何事にも気力がなく、興味ややる気がわかない」、「人の気持ちが分かりにくく、ずれてしまう」、「注意が散りやすく、よそ見や忘れ物、ミスが多い」、「友達とケンカしたり、絶交したりが激しい」などです。また、ゲームを小学校に上がる前に始めた子では、現在ゲームをあまりしない子でも、勉強時間が短く、休憩時間以外に友達と遊ぶ時間も短い傾向がみられています。
 就学前という人生早期の、脳の最も重要な形成段階で、ゲームや刺激の強いメディアに容易に触れることは、後に思ってもみない災いを引き起こしかねないのです。保護者は、お子さんの大切な人生が、その準備段階で損なわれることのないように注意すべきといえます。
損なわれる心の発達と幼くなる現代人
 ゲームが子供たちの社会的成長に及ぼす影響について、著者は二つのことを述べています。一つは、ゲームで遊ぶこと自体が、子供の心や脳の発達に及ぼす悪い影響です。もう一つは、ゲームで遊ぶ時間が増えることにより、子供が友達と交流する遊びの中で、社会的なスキルを高め、共感性や他者に対する配慮や常識を身につける機会が奪われているという影響です。
 最近の中学生、高校生、さらには社会に出る年齢の若者においてさえ顕著にみられる傾向は、「幼くなっている」ことだと述べています。突発的な事件を起こした子供すべてにおいても当てはまるといいます。彼らの心は十代後半にあっても、ある部分において、六~八歳の子供たちの特徴的は傾向を示しています。その特徴は次の五つです。①現実と空想の区別が十分でなく、結果の予測能力が乏しい。②相手の立場、気持ちを考え、思いやる共感能力が未発達である。③自分を客観的に振り返る自己反省が働きにくい。④正義と悪という単純な二分法にとらわれやすく、悪は滅ぼすべしという復讐や報復を正当化し、その方向に突っ張りやすい。⑤善悪の観念は、心の中に確固と確立されたものではなく、周囲の雰囲気やその場の状況に左右される。小学校低学年レベルから高学年レベルへの心の成長がうまく起こらないまま、それが中学になっても、高校になっても、青年になっても続いている、つまり現代においては、人々の心がどんどん幼くなっているという相当深刻な状態があります。そこには、現実の存在よりも、メディアが提供する、単純化された仮想の存在に親しみすぎた世代の弱点が露呈していると著者は述べています。
メディアによって自我理想像がゆがめられている
 有史以前より人間にとって四歳からの成長として大切なのは、母親の膝元を徐々に離れ、同年代の子供達と遊び、父親や年長者に連れられて、新しい体験の場へと出向くことです。特に、父親との関係が重要と考えられています。ところが現代の子供達では、この時期になると、メディアとの接触が急速に存在感を増していきます。子供が自ら進んで求める場合もあれば、親や大人の方から与える場合もあります。親や大人達は、自分で子供の相手をする代わりに、メディアに読書親子.jpg子供の相手をしてもらおうとします。本を読んだり話を聞かせるよりも、ビデオを見せた方が手っ取り早いし、子供も喜ぶ。外で体を使って遊ぶ相手をするよりも、ゲームをさせておいた方が、親も休日をのんびり過ごせるし、子供も機嫌がいい・・・私の小さい頃(四十年以上前ですが)を思い出してみると、ビデオやゲームはありませんでしたから、暗くなるまで友達と外で遊びまわっていたし、家では何かしら弟と遊びを探して過ごしていました。冬の寒い時期は、休日には必ず両親にスキーに連れて行ってもらいました。ところが、私の子供達(高校生、大学生ですが)の小さい頃は、どうだったでしょうか。前述にあったようにメディアに子供達の相手をしてもらうことが多かった・・・今になって反省します。
 著者はこうした現代の当たり前の習慣が、かなり恐ろしいことを起こしていると憂慮しています。つまり、人生を決定づけるといっても過言でない自我理想像を形成する段階において、子供たちは父親や母親、学校の先生、歴史上の偉人ではなく、メディアの中の存在を理想像として心に刷り込んでしまうのです。超人的な戦闘能力で敵をなぎ倒すヒーローであったり、魔法の力で何でも思い通りにしてしまう便利な存在だったりをです。なぜ、現代の子供達が父親や母親に対して、尊敬や親しみさえ抱かず、まるで異物に対するような目を向けて平然としているのか、冷酷に暴力をふるうことさえ平気でしてしまえるのか、根本的な原因がここにあると著者は指摘します。マンガやアニメの主人公、映画やドラマの俳優のようなパーフェクトな存在に理想を求め過ぎれば、現実の存在はあまりに不完全な存在です。メディアによって自我理想像がゆがめられると、現実の存在に対しては、相手の不完全な部分にばかり注意を向け、否定的でシニカルな見方をしてしまうのです。
 メディアが発達したことで、私達の生活は大変便利になりました。しかし、その反面で、人間の心を豊かにするという大切な面が著しく脅かされていると感じます。紙面の都合上、『脳内汚染』で語られていることを、次回もお伝えしたいと思います。 
医療法人すずらん まえやま内科胃腸科クリニック ご予約・お問い合わせ 0265-82-8614