認知症に向き合う~中編~ 院長&スタッフブログ | 医療法人すずらん まえやま内科胃腸科クリニック

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認知症に向き合う~中編~

 前回号では、①認知症とは?②認知症を疑ったらどうする?③認知症は誰もが避けられない、だから健康長寿を目指そう、といった内容をお話しいたしました。折しも先月4月下旬に京都市で認知症国際会議が開催されました。認知症は今や地球規模の問題になっています。社会が認知症患者とどう向き合っていくのかが話し合われました。認知症に優しい社会の実現には、当事者の視点が欠かせないという意見が多く出されたようです。今回は日本において、社会が認知症患者とどう向き合っているのか、また、今後どう向き合っていったらいいのか、などについてお話しします。
高齢者による交通事故の問題について
 皆さんご存知のように、高齢運転者による交通事故が相次いでいます。警察庁によると、日本全体では交通事故による死亡件数は減っています。ところが、75歳以上の高齢運転者による死亡事故件数の全体に対する割合は2005年7・4%であったのに対して、2015
交通死亡事故推移.jpg
年では12・8%までに増えています(左図参照)。自動車大手各社ではここ数年、軽自動車を含む新車への衝突防止機能の搭載を加速させています。ただし、ほとんどの中古車には搭載されていないため、高齢者の手に届くほど十分に普及していないのが実情です。
道路交通法の改正について
 相次ぐ高齢者による交通事故が社会問題化したのを受けて、今年3月道路交通法が改正されました。従来は75歳以上の運転者は、3年に1度の免許更新時に認知機能検査を受けることが定められていました。新しい改正法では、免許更新時に加えて、信号無視や逆走など認知症の影響とみられる18項目で違反した場合も認知機能検査が義務付けられました。この検査では①「認知症のおそれがある」、②「認知機能の低下のおそれ」、③「認知機能の低下のおそれなし」の3段階に分類されます。①「認知症のおそれがある」と判定された場合は医師の診断を受けなければなりません。認知症と診断されれば、免許取り消しや停止となりますが、これは従来の法律と変わっていません。①で認知症と診断されなかった高齢者、②③の高齢者は、分類に応じて2時間から3時間の講習(実車指導、個別指導)を受けることになります。
新しい改正法の問題は?
 今回の改正法は認知機能をこまめにチェックする機会を設けたことが特徴で、一定の効果が期待されています。一方で、医師側からは心配の声が上がっています。対象範囲が拡がったことで、診察数が増え、ただでさえ認知症を専門とする物忘れ外来は予約がいっぱいなのに、対応できなというわけです。また、認知症でないと診断された高齢者が事故を起こした場合、刑事上の責任はないものの、民法上の責任を問われる可能性があるからです。私自身も患者さんから運転免許更新の相談を何件か受けたことがありますが、その方の生活に関わることでもあり、社会的な責任もある事柄であるため、認知症専門医に紹介させていただいています。
 日本では、認知症と診断されれば一律免許取り消しとなりますが、オーストラリアのビクトリア州では、認知症の人でも実際に運転してもらうなどして個々の能力を判断し、運転を認めている所もあります。日本でも初期の認知症であれば、一人一人の運転技量等を確認し、運転の可否を総合的に判断する仕組み作りの構築を求める声が上がっています。一方で、日本の社会では依然として「認知症の方は危ない行動をするに違いない」という思い込みも根強くあり、なかなか難しい問題かと思います。
全国に広がる「認知症カフェ」「認知症サポーター」
 2015年政府は「認知症の人やその家族の視点の重視」などを理念とする国家戦略として「新オレンジプラン」を発表しました。その柱となっているのが「認知症カフェ」です。「オレンジカフェ」とも呼ばれますが、常設の店舗ではなく、自治体やNPO法人などが開催する交流の場になっています、現在、全国で2000カ所以上あります。私が10年来往診を続けている認知症で寝たきりのYさんのお宅では、1年半前からこの「認知症カフェ」を個人で始めています。Yさんの介護をずっと続けている娘さんは、「認知症とどう向き合えばいいか悩んでいる家族は多いです。同じ境遇だからこそ分かりあえるし、助言もできるし、支え合うことができます。」と話していました。
 先月京都で開催された認知症国際会議で日本から発表されたのが「認知症サポーター」です。恥ずかしながら、私も新聞記事で今回初めて知りました。十二年前に厚生労働省が始めた、認知症を正しく理解し、偏見を無くすための取り組みです。認知症の症状や本人への接し方、場面に応じた支援の方法について学ぶ約九十分の無料講座を受講すると、認知症サポーターと認定されます。日本ではこれまでに、自治体や職場などで約26万5千回の講座が開かれ、約883万人のサポーターが生まれているそうです。日本発の認知症サポーターは世界にも広がり、日本はじめ十一カ国で活動が行われています。認知症の家族がいなくても、認知症患者に優しい社会を作っていくため、認知症サポーターがどんどん広がっていけばいいですね。皆さんも受講してみませんか。お問い合わせは、「全国キャラバン・メイト連絡協議会」TEL03‐3266‐0551になります。
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2025年問題にどう向き合っていくのか?
 あと8年後の2025年には、団塊の世代が一斉に75歳以上になります。国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類が経験したことのない超・超高齢化社会となります。10人に1人が認知症という時代がすぐそこまで来ています。日本は3年後の東京オリンピックで大いに盛り上がることでしょう。ですがその後、若者が減り老人が増え、物作り日本を支えてきた生産人口は大幅に減り、介護や葬儀に携わる人が激増する、まさに国全体が老境化する状況が心配されています。どうすればいいのでしょうか?認知症が誰でもなる病気であるならば、自立を望む当事者には必要なサポートをして働いてもらう、加えて、介護離職者を増やさないような柔軟な働き方を実現していく働き方改革が必要になります。日本が認知症に負けないために大切なのは、認知症患者を社会のお荷物と考えるのではなく、社会の担い手の一員であるという認識を持つことではないでしょうか。
 次回は、今期待されている認知症の治療についてお話しいたします。
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