認知症に向き合う~後編~ 院長&スタッフブログ | 医療法人すずらん まえやま内科胃腸科クリニック

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認知症に向き合う~後編~

 前回号で3月からの道路交通法改正により、75歳以上の高齢運転者の認知症検査が強化されたお話をいたしました。先日、これに関する警察庁発表の報道がありましたので、
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ご紹介いたします。3月から5月末までに認知症のおそれがあると判定された高齢運転者は1万1617人に上り、そのうち1299人が医療機関を受診し、14人が免許停止となりました。また、3月から5月末までの75歳以上の運転免許の自主返納は5万6488件に上り、年間の自主返納は前の年と比べ大幅に増える見通しとなったようです。今後、高齢者による交通事故が減少に転じていけばいいですね。さて、今回は現在行われている認知症の治療、そして今後期待されている治療についてお話しいたします。
現在の認知症治療薬
 日本国内では現在、4種類の薬が認可されていますが、残念ながら認知症の根本的な治療薬ではなく、病状を遅らせるお薬です。2つのグループに分けられ、1つがア
セチルコリンエステラーゼ阻害剤です。アリセプト(ドネペジル)、レミニール、リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ(張り薬)の3つがあります。認知症では、脳内での神経伝達物質アセチルコリンが減少しているため、このアセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼという酵素を阻害することで脳内のアセチルコリンを増やし、認知機能を高めるお薬になります。副作用として嘔気や下痢などの消化器症状、興奮などの精神症状があります。張り薬では、貼付部位のかゆみや発赤などの皮膚症
アリセプト.jpg
状があります。保険上適応となるのは、現在のところアルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症(アリセプトのみ)です。
 もう1つのグループに属するのがメマリーです。認知症患者の脳内では、異常な蛋白質によって神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰な状態になっています。メマリーは過剰なグルタミン酸の放出を抑えて、脳神経細胞を保護する働きがあります。副作用として、めまいやフラツキがあります。アリセプトとは作用機序が異なるため、アルツハイマー型認知症が中等症まで進行した時に、アリセプトにメマリーを併用するという治療も行われています。
薬物療法以外の認知症治療
 これらのお薬を使って、認知症の進行を抑えるというのが現在の治療の主流になっていますが、副作用により薬が使用できない場合もあります。認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」の段階から薬物療法を開始した方が予後良好と考えられており、実際の医療現場でも、早期に薬物療法を開始する場合が多いと思います。
 最近、国立長寿医療研究センターが発表した興味深い研究結果があります。認知症でない65歳以上の愛知県大府市の住民約4200人を4年間追跡したものです。国際的なMCI判定基準をもとに検査したところ、研究開始時点で約740人(18%)がMCIと判定されました。ところが、4年後に同じ検査を行うと、MCIだった人の46%が正常範囲に戻っていたというのです。MCIと判定されても、約半分の方が正常に戻ったということは、加齢以外の別の因子が働いたということだと思います。おそらく、MCIと判定された方々あるいはその周囲の人の働きかけで、脳活性化リハビリテーション(いわゆる脳トレ)が行われた結果ではないかと推察します。私の患者さんの中にも、副作用で薬物療法ができないアルツハイマー型認知症の患者さんで、病状があまり進行しない、以前よりも病状が良くなっている方が数人いらっしゃいます。脳活性化リハビリテーションが効果を上げているのでしょう。脳活性化リハビリテーションについては、また改めて取り上げたいと思っています。
開発中のアルツハイマー治療薬
 アルツハイマー型認知症の初めての治療薬アリセプトを開発したのは、日本の製薬会社エーザイです。アリセプトは前述した通り、認知症の進行を遅らせるいわゆる「対症療法」の治療薬でした。そのエーザイが今、3年後の2020年以降の販売に向けて準備を進めている2つの新薬があります。これらの新薬は、対症療法ではなく根本治療になるお薬として期待されています。
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 正常な脳から、アルツハイマー型認知症が発症するまでの過程の模式図を示します。鍵を握っているのが、「アミロイドβ」と呼ばれる蛋白質と、これが凝集してできる「アミロイドβフィブリル」という物質です。これが蓄積すると、脳に黒い斑点(老人斑)ができ、このアミロイドβフィブリルと老人斑が、神経細胞を殺していると考えられています。
 世界中の製薬会社は、左図に示した通り、脳にダメージを与える物質が生成される各過程に介入して、異常な物質の生成を抑える薬を開発しています。エーザイは、バイオベンチャーの米バイオジェンと共同でBACE阻害剤と抗アミロイドβプロトフィブリル抗体を開発しました。前者は治験の最終段階であるフェーズ3、後者はフェーズ2の状況です。これらの根本的な治療薬が登場すると、アルツハイマー型認知症を早期に発見し、早い段階から治療を始めれば、症状が深刻になる前に寿命を終えられる患者、つまり健康寿命の長い方々が増える可能性が出てきます。つまり、認知症患者を社会の「お荷物」から「稼ぎ手」に変えることができるかもしれません。
日本の国民皆保険を守ろう!
 私が医者になってから、色々な治療薬が出てきました。生活習慣病の治療薬、抗癌剤など、創薬により、多くの人々がその恩恵を受け、健康寿命を延ばしていると実感します。日本が世界に誇れる長寿国になっているのは、国民全員が平等に医療の恩恵を受けられる「国民皆保険」のお陰だと思います。この素晴らしいシステムを継続するためには、国民一人一人が節度をもって、医療保険を利用すべきでしょう。あちこちの医療機関を受診しまくる、医療保険を利用して様々な薬の投薬を医師に迫るなど、限りある医療財源を浪費するようなことは慎むべきと感じております。

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