院長&スタッフブログ | 医療法人すずらん まえやま内科胃腸科クリニック

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 昨年12月2日、医療法人すずらんの忘年会がアイアパル伊南で開催されました。クリニック、こもれびの家、すずらん病児保育室のスタッフ総勢40名程の会でしたが、私にとっては思いもかけない贈り物がありました。クリニック開業15周年を記念しての私へのビデオレター。クリニック、こもれびの家、病児保育室のスタッフ、私の師匠小出俊美さん、混声合唱団明日歌の団員の皆さんからのメッセージでした。私は15周年という節目を全く考えておらず、皆さんからの温かな言葉に、思わず涙があふれました。今回は医療法人すずらんの15年を振り返ってみたいと思います。
クリニック15年
 平成十四年四月一日、『思いやりの医療、良質でわかりやすい医療、健康を保つ医療』をスローガンに掲げ、まえやま内科胃腸科クリニックは開業しました。クリニックに来るとホッとできる空間を目指して、待合室は高天井のゆったりスペースにし、クリニック周囲には緑を多くしました。スタッフは心のこもった応対をしてくれています。病院並みの検査機器をそろえて検査結果をその日のうちに伝える、口頭だけではなくクリニック独自の健康手帳や検査データに私のコメントを記してお渡しするなど、きめ細かな診療をしてきました。
 その副産物が、患者さんの待ち時間が長くなることです。現在、予約の患者さんでは1時間から1時間半、予約外ですと2時間から3時間の待ち時間になっていますが、過去にはそれ以上の待ち時間が発生し、クレームは後を絶ちませんでした。平成二十年からの電子カルテの導入により、看護師にできるだけ患者さんからの問診内容をカルテに記載してもらうなど、私の診療業務時間の短縮化をはかり、ここ数年は待ち時間に対するクレームは少なくなったように感じます。おそらく、待ち時間が長くても私の診療スタイルに理解をしてくれる患者さんが、クリニックに通い続けてくれていると思います。感謝の気持ちでいっぱいです。
 この規模で人間ドックを行っている診療所は珍しいと思います。病院で行われている内容と変わらず、開業以来費用は3万円のまま据え置きで、破格の安さになっています。一日一名の対応ですが、リピーターも多く、病気を予防する、健康を保つ意味で貢献できているのではないでしょうか。
 さて、ここで下にある絵の説明をします。これは第二診察室に飾られていますが、第一診察にも同じような女の子の絵があります。診察の際、多くの患者さんから「この絵はいやされるね~」と言っていただいています。実はクリニック開業の際、当時小学校2年生だった長女が描いてくれたものです。今思うと、この女の子は長女が自分自身を描いたもので、「パパ、お医者さん、がんばってネ」というメッセージだったような気がしています。その長女は今24歳、医学部6年生です。来春には医師になる予定で、最近になって胃腸科を専攻すharukanoe.jpgるということを知りました。私から医者になることを勧めたことは一度もありませんし、まして私と同じ胃腸科を専攻して欲しいと願ったこともありません。正直驚いています。親の背中なのでしょうか。嬉しいものですね。
 内視鏡実績についてお話します。この十五年間で胃カメラは1万8千480件、大腸カメラは9千314件行いました。入院なしで日帰りで大腸ポリープを内視鏡的に切除できる長野県で数少ないクリニックですが、十五年間で6千744件の大腸ポリープ切除術を行いました。出血によるショック(血圧低下)は10数例程あったでしょうか。昭和伊南病院や伊那中央病院へ入院になった症例は5例程あったかと思います。穿孔例(大腸の壁に穴をあける)、死亡例、手術に至った例はありません。開業医が入院なしで行うのは大きなリスクがあります。冷や汗をかく場面もありましたが、この十五年で私も技術的に大きく進化しました。看護師はびくびくしながら、私の内視鏡処置の助手を務めてくれました。よくぞ私についてきてくれたと感謝しています。今は仏のようになった私のもと、日々穏やかに助手をしてくれています??? 
子供への思い
 私は五人の子宝に恵まれました。今は4歳9ヶ月と1歳8ヶ月の男の子と暮らしています。56歳になる私にとってあまりに小さな子供たちです。大きな責任を感じます。トライアスロン、フルマラソンからは手を引きました。7時間の睡眠時間を取って、家内には食事内容に気を配ってもらい、健康管理はきちんとしているつもりですが、アルコール摂取量はまだ多いかもしれませんね(反省!)。
 平成28年2月より育児支援としてクリニック2階で『すずらん病児保育室』を立ち上げました。待ち時間が長い当クリニックでは、子供には敬遠されてきましたが、小児診療の機会が増えました。発達障害のある子供、母子家庭の子供、虐待されている疑いのある子供・・・自分の子供にも発達障害があり、そんな中で私の子供たちへの思いが深くなっていった気がしています。平成29年5月より看護大学生のボランティアによる無料学習塾『すずらん放課後学び塾』を開始しました。今年5月からは宮田村小中学校の発達障害児を対象にした放課後等デイサービス『宮田わくわく学び塾』を立ち上げました。スローガンは「わくわく笑って、ワンダフルに変身」です。子供の改善を目指すには、親御さん自身が変わらなければなりません。私もまだまだですが、自分の息子と共にワンダフルに変身すべく日々努力しています。そんな私の現在進行中の子育ての経験のお話をしながら、宮田村の未就学の発達障害あるいはその疑いのあるお子さんの親御さんとの懇談会を今月から始めました。
 皆さんも虐待死した船戸結愛(ゆあ)ちゃんの報道には、胸が締め付けらる悲しみを感じたと思います。子供の権利や安全を守って、一人でも多くの子供たちが将来伸び伸びと生きていけるような支援をしていかなくてはなりません。それには、地域社会全体で子供たちを育てていく意識、仕組み作りが必要と感じています。医療法人すずらんは、これまで通り、医療・介護で社会に貢献して参りますが、子供たちの未来を明るくするための取組みにも積極的に関わっていきたいと思っています。応援をお願いいたします。
    【院長 前山浩信】

5月14日放課後等デイサービス『宮田わくわく学び塾』開設

 すずらん病児保育室を始めて3年目となり、保育室への回診などお子さんを診させていただく機会が増えました。病児保育室を利用にあたっては事前登録をしていただいているため、受け入れにあたってはお子さんの情報を頭に入れています。そんな中で感じるのは自閉症、ADHD(注意欠陥多動性障害)といった発達障害の子供が増えているということです。
 私事で恐縮ですが、私の4才になる息子が、昨年6月自閉症・ADHA特性ありと小児科で診断されました。児童福祉施設「つくし園」でお世話になり、通常の保育園には半年遅れで入園し、息子一人のために保育に当たってくれる保育士さんがついてくれています。駒ヶ根市の児童福祉の充実ぶりは近隣の市町村と比べて特筆すべきものがあり、親としては感謝の気持ちでいっぱいです。
 医者という立場であっても、子供が発達障害ありと診断されることはつらいものです。3歳児検診などで発達に遅れがある言われた親御さんが不安や悩みを抱えて、それを認めたくないと思う気持ちはよくわかります。クリニックでは小児科を標榜していますが、私は内科
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専門医であって、お子さんの診療は経験不足という事実は否めません。病児保育を利用しているお子さんで何か問題があると、さいたま市で小児科を開業している私の弟にLINEで相談することもよくあります。息子に発達障害がありそうだと思った頃から、発達障害に関する書物をたくさん読み、セミナーや講演会にも参加してきました。
 発達障害の原因には様々な説がありますが、最大の要因は遺伝と考えられています。我が身を振り返ると、小学低学年までは落ち着きがなく、忘れ物が多かったり、失敗することも多く、親には「ドジな浩信」とよく言われていました。色々なことへのこだわりも強かったと思いますが、これは今の自分に生かせています。友達と上手に付き合うことも下手で、小学校時代はいじめにも合っていて、今思うと生きづらい時代でした。息子も私と同じ境遇かと思うと、親として何とかしてあげたいと強く思いました。医師として発達障害で悩んでいる親御さんの力にもなりたい、そんな思いで発達障害児が改善する最善の方法を模索してきました。そして、5月から宮田で始めるのが放課後等デイサービス「宮田わくわく学び塾」です。今回は、学び塾を紹介するチラシの中身を掲載させていただきます。

 宮田わくわく学び塾(以後、学び塾)では六つのコンセプト(左図)のもとに、親御さん、学校とタッグを組んで発達障害児の改善に取り組んでいきます。
親御さんの笑顔と育児テクニックの獲得
 発達障害児を持つ親御さんは、不安や悩みで顔つきが暗くなりがちです。これでは子供の改善は望めません。親御さんがいつも笑顔でいれば、子供の笑顔も増え、学習ホルモンが分泌され脳の働きが活性化されます。何より大切なのは、子供がいい行動を取れるように親が仕向け、少しでも改善が見られればほめ尽くす。これが子育ての極意ですが、これには知恵とテクニックが必要です。それを学ぶのが『ペアレントトレーニング』です。学び塾では、療育学習総合支援教室ステージアイ(駒ヶ根市)方式のペアレントレーニングが受けられます。親が変わらなければ、子供の改善は望めません。ぜひとも受講しましょう。
食事の改善により脳の血流アップをはかる
 現代の食環境は大変便利になっていますが、ここに大きな落とし穴があります。コンビニ弁当は、体に必須なミネラル(カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウム、銅など)がかなり不足しています。体に有害なトランス脂肪酸の多い菓子類、ファーストフード、インスタント食品、レトルト食品、冷凍食品を過剰に摂取していることも問題です。小麦に含まれるグルテン、牛乳に含まれるカゼインの摂取をおさえ、青魚に多く含まれるフィッシュオイル(EPA/DHA)を積極的に摂ることで、発達障害児の改善が得られることも知られています。食事の改善による子供達の体質改善は重要です。まえやま内科胃腸科クリニック院長が食事指導を行います。
 成長発達サポート表による取り組み
  親御さんが子供の状態(平均的な月齢よりどれだけ遅れているか)、具体的にどの点を改善すべきかを知った上で改善を目指すことが大切です。学び塾では、成長発達サポート表を使って、社会面、言語面、知覚面、身体面の四つの分野での評価を親御さんが行い、学び塾のスタッフとともにショートステップで改善方法を模索し実行します。
高速学習による右脳からの入力
 発達障害児では、情報を一時的に記憶するワーキングメモリー、「脳のメモ帳」と言われている領域が小さい傾向があります。ワーキングメモリーが小さいと、勉強を含めた様々な場面で子供が困る機会が多くなります。様々な情報を、右脳から高速入力してあげると、ワーキ
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ングメモリーを通さずに長期記憶として脳に定着するため、学校での学習がしやすくなります。また、ワーキングメモリーの小さな子供では、この領域を大きくしてあげるトレーニングも同時に行っていきます。
社会性を学ばせるソーシャルスキルトレーニング
  発達障害児では、様々な場面にふさわしい言動が苦手な傾向があります。ソーシャルスキルトレーニングでは、様々な状況(仮想)の中での適切な行動を成功体験させることによって、社会性を学ばせることができます。
見えづらさを改善させるビジョントレーニング
 発達障害児では見る力が弱いために、黒板の字を書き写すのが遅かったり、体を動かすことが苦手だったりする傾向があります。見えづらさを改善するトレーニングを行うことで、書く力や運動能力を高めることができます。

 学び塾では、子供達がわくわくしながら楽しく学べる工夫をしていきます。畑での野菜作り、お料理、工作、夏休みには秘密基地遊び、お年寄りとの交流会なども企画していきます。
 親の意識改革、子供の改善を信じての懸命の取り組み(親御さん、学校、学び塾がタッグを組んで)があれば、発達障害児は必ず改善できます。子供によっては天才性を発揮することもあるでしょう。学び塾には発達障害児の改善に情熱を持ったスタッフ(上写真)が集まっています。子供達の未来のために、手を取り合っていきましょう。

 前号では、コンビニ食品で防腐剤としてカルキ(次亜塩素酸ナトリウム)が多量に使われていること、パンや牛乳の摂取が様々な病気の原因になっていることをお話しました。コンビニ食品はできるだけ控えて面倒でも手作り弁当にしましょう、朝食がパンと牛乳になっているご家庭なら、ご飯にみそ汁に変えましょう、というお話でした。
 私の患者さんで、昔、食肉製造会社の社長さんだった方が前回の新聞を読んで、こんなお話をして下さいました。この方は、上伊那地域で初の添加物(カルキなど)を使用しない体にいいハムを作ったそうです。ところが、色合いが悪いために売れなくて、製造を止めたそうです。もう一つのお話ですが、50年程前に会社の社員の奥さんが、スイカに塩と間違えてカルキをかけて食べてしまい、亡くなった事件があったそうです。誰でも食品添加物への関心がないと、見た目はいいけれど体には良くない食品を選んでしまうこと、そして、食品添加物の恐ろしさを伝えてくれるエピソードでした。
やめるのは牛乳だけか、乳製品もダメなのか?
 前号の新聞を読んで、何人かの方から「乳製品もダメですか?」という質問を受けました。牛乳には、人間の体では消化されにくいカ
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ゼインが多量に含まれていること、乳牛に遺伝子組み換え成長ホルモンや抗生物質が多量に投与されていること、エサに遺伝子組み換え穀物が使われていることなどを考えれば、完全に止めるべき食品です。一方、乳製品はどうでしょうか?代表的な乳製品としては、ヨーグルト、チーズ、バターがあります。ヨーグルトとチーズは発酵食品で、カゼインはかなり分解され、牛乳よりも消化が良くなっていますので、大丈夫です。また、ヨーグルトやチーズには乳酸菌が含まれていますので、腸内の善玉菌を増やすという健康効果があります。ただし、ヨーグルト摂取でお腹の調子が悪くなる方もいますので、そういう方にお勧めの発酵食品は納豆です。チーズですが、プロセスチーズは加工品ですので控えて、ナチュラルチーズを選びましょう。バターはほとんどが脂質で、カゼインは極めて少ないので大丈夫です。
パンはなぜ止められないのか?
 前号の新聞を読んで、「でも、パンってむしょうに食べたくなるんだよね~」という方が何人かいました。実は、パンを食べると体内で
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「モルヒネ」と似た物質が作られるんです。グルテンが分解される途中でできる「エキソルフィン」という物質です。モルヒネには強い鎮痛作用があるのと同時に、強い依存性があることは皆さんご存知でしょう。モルヒネ様物質エキソルフィンが脳内に作用して「幸せ感」をもたらし、さらに繰り返して食べたくなる中毒症状が引き起こされ、食欲も亢進させるので、さらにパンを食べ続けてしまうのです。実は、牛乳のカゼインが分解される過程においても、このエキソルフィンが作られています。朝食をパンと牛乳にすると習慣化してしまうのも、この辺に原因があるのかもしれませんね。
トランス脂肪酸の多い食品はひかえよう!
 「油脂」「あぶら」「脂肪」などと呼ばれる脂質は、私たちの体に必須の栄養素です。食事で脂質をとると、脂肪酸とグリセリンに分解されて使われます。特に、細胞膜の成分として重要なのが脂肪酸です。人体にとって不自然な構造を持っていて、異物と認識される脂肪酸、それが「トランス脂肪酸」です。市販のパンやお菓子によく使われているショートニングやマーガリンは、液体の植物油が常温で半固
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形になるように、水素を添加して作った油です。トランス脂肪酸はこれらに多量に含まれています。マヨネーズ、コーヒーに入れるミルク、インスタント食品、レトルト食品、ファーストフード、冷凍食品にも多く含まれています。
 脂肪酸は全身の細胞膜の原材料です。トランス脂肪酸も不自然な構造とはいえ、体に吸収されます。固形化されたトランス脂肪酸が細胞膜に入り込むことで、細胞膜の流動性がなくなり、固まった状態になります。脳の細胞に取り込まれると、脳の神経伝達物質がうまく伝わらず、うつ状態に陥りやすくなります。細胞どうしの連絡が滞るため、あらゆる病気にかかりやすくなります。癌、動脈硬化、不妊、聴覚障害、免疫障害、糖尿病、心臓病など、様々な障害に関与します。トランス脂肪酸を過剰に摂取している人は、攻撃的な性格や、うつ病になりやすいという報告もあります。
 トランス脂肪酸は、欧米では2000年代前半から使用が規制されています。数年前には、ニューヨークのマクドナルドでショートニングの使用が禁止になり、アメリカ全土で表示の義務化や使用禁止の動きがみられています。日本ではトランス脂肪酸の摂取量が、WHO勧告の1%未満をクリアしているという理由で、規制は全く行われていません。ですが、健康被害が明らかなトランス脂肪酸の摂取は、できるだけひかえた方が得策です。
 前述の食品の他に、自然の油も加熱処理するとトランス脂肪酸が発生します。植物油に多く含まれるリノール酸も、加熱で酸化しやすくトランス脂肪酸が発生しやすい油です。植物油というと体に良いような印象を受けますが、コーン油、ベニバナ油、ごま油、グレープシード油、ひまわり油などはリノール酸をたくさん含んでいます。米油、亜麻仁油、えごま油、しそ油、ココナッツオイルなどの油が安全です。いい油でも、高温で長時間加熱するとトランス脂肪酸が作られます。できるだけ質のいい新鮮な油を生でとるようにして、揚げ物はひかえめにしましょう。油ものを電子レンジでマイクロ波加熱することも、トランス脂肪酸を多量に発生させますので、注意が必要です。
大型魚の摂取はひかえよう!
 昨年の十一月東北大チームの免疫調査の結果が発表されました。マグロやカジキなどメチル水銀を比較的多く含む魚介類を妊婦が食べ過ぎると、生まれた子の運動機能や知能の発達に悪影響が出るリスクが増すことがわかりました。メチル水銀は水俣病の原因物
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質ですが、一般的な食用に問題のない低濃度の汚染でも、胎児の発達に影響する可能性があることが日本人対象の調査でも初めて明らかになりました。水銀を多く含んでいる魚は、マグロ、カツオ、スズキ、カジキ、キンメダイなどの大型魚です。水銀の毒性で一番恐ろしいのは、神経細胞の正常な発達を妨げることにあります。現在、爆発的に増加している子供たちの自閉症、注意欠陥多動性障害といった病気の関連も疑われています。子供たちには、大型魚をできるだけ摂取させない配慮が必要だと思います。
アマルガムの問題
 歯科治療で歯の詰め物として使われる「アマルガム」、皆さんはあまりご存じないかもしれません。実は、昨年4月までこのアマルガムが保険適用の歯の充填物として使われていました。アマルガムには無機水銀が約50%含まれていて、体温で口腔内に容易に気化・蒸発しています。ドリルで安易に削ると、水銀が蒸気となって拡散し、患者は基準値の何千倍もの濃度の水銀蒸気にさらされることになります。当然、治療に当たる歯科医も水銀蒸気を吸い込むことになります。昔の歯医者さんは、手袋をせず歯科治療をしていましたから、アマルガムから多くの水銀を体内に取り込んでいた可能性があります。昨年4月からアマルガムは保険適用から撤廃されましたが、皆さんの歯に残っている方も多いかもしれません。
 現在の歯科治療ではアマルガム始め金属類の詰め物をひかえて、できるだけセラミックにしているようです。ただし、セラミックは金属
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に比べると柔らかいため、耐久性に問題があるようです。ですが、健康のことを考えれば、歯科の詰め物にはセラミックを選択すべきと思います。アマルガムが歯に残っていて、セラミックに切り替えたいと考える方も多いかもしれませんが、一つ注意があります。先ほどお話した通り、アマルガムをドリルで削ると水銀蒸気が発生します。理解のある歯科医は、アマルガムを除去する際、自身は防毒マスク・完全防護衣の上で、室外排気の環境下で治療をし、ドリルで削る際には、患者に息止めをさせるなどの配慮をしているようです。安易なアマルガムの除去をされると、かえって健康被害を招く恐れがあります。ご注意下さい。
 「食が子供をむしばむ」と題して、3回に渡ってお話いたしました。子供の脳は10歳くらいまで成長しますが、それまでの脳の発達具合で、その子の人生は決まっていきます。現代において、食の環境は大変便利になりました。一方、体には良くない、毒といってもいいような食品がちまたにあふれています。大人の無理解で、食事によって子供が被害を受けることがないように、口から取るものに細心の注意が必要ではないでしょうか。

 前号では、長野県真田中学校での給食変革による奇跡をお話しいたしました。給食を米食にして、地産地消の素材で、無農薬、低農薬の食事に変えたら、非行問題がゼロになったという今から20年程前にあった本当のお話しです。今回は、どんな食材が子供の脳に悪い影響を与えているのか、お話しいたします。
コンビニ食が腐りにくいのはなぜか?
 前号で、真田中学で非行問題を起こしていた生徒の家庭ほど、コンビニ食に偏っていたお話しをしました。コンビニ店は、24時間営業であちこちにお店があって、私たちの生活になくてはならないものになっています。皆さん、コンビニ食による食中毒事件の報道って、記憶がないでしょう。なぜだか分かりますか?
 国の食品基準により、お店で売っている食品は36℃の環境下で2日間(48時間)腐らないように加工する義務付けが行われています。家庭で作った食品で、丸一日経過したものは食べませんよね。コンビニ店では作って2日経過しても、腐らないような加工がしてあり
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ます。コンビニのお弁当やおにぎりには、次亜塩素酸を混入させているのです。ところが、次亜塩素酸の表示義務がないために、皆さんはそれを知らないのです。 次亜塩素酸は、消毒用のキッチンハイターの主要成分で、細菌やウイルスを死滅させるものです。プールや水道水にも使われるカルキが次亜塩素酸です。水道水に使われる次亜塩素酸はごく微量ですが、健康を考える方は、水道水を沸騰させてカルキを飛ばして飲料水として飲む方もいますよね。
 実際のコンビニ弁当やおにぎりには、念入りに50℃の環境下で3日間(72時間)食品が腐らないようにするため、多量の次亜塩素酸が混入されています。次亜塩素酸は、明らかに人体にとって毒物です。コンビニ食を作っている従業員は、この事実を知っていますから、コンビニ食は絶対に食べないそうです。
 これに関連して、回転ずしのお話しもします。回転ずしでの食中毒事件の報道も聞かれませんよね。やはり、多量の次亜塩素酸を混入させているからです。こもれびカルテットのメンバーであるI君が、以前こんな話を私にしました。「H寿司はまだいいけれど、K寿司の寿司はかなりカルキ(次亜塩素酸)の味がして、やばいですよ」と。味に敏感な人には、回転ずしの寿司が体に良くないことが分かるんですね。子供が大好きで、回転ずしをよく利用している私には分かりませんが...
 家庭で作った食事がやはり一番安全なんです。キッチンハイターの混入した食品を、誰も好んで食べませんよね。特に脳が発達段階にあるお子さんには、腐らないような食品を与えてはいけない、腐る食品(次亜塩素酸の入っていない)を与えるべきです。もちろん、腐る前に食べないといけませんが。マスコミでは、こういった事実を国民に知らせる報道はしません。なぜなら食品業界にとって、生きるか死ぬかの企業存続に関わるデリケートな問題だからです。国も食品衛生管理上、食中毒を予防する観点で、食品に毒物を入れることを容認しているわけです。
できるだけパン食を控えましょう!
 真田中学の給食の改善での大きなポイントは、パン食を止めて、完全な米飯に切り替えたことです。お分かりになると思います。パンは健康に良くない食品なのです。2年前のすずらん新聞(第161、162号)で『グルテン過剰摂取警報』でも取り上げましたので、そちらもぜひお読みください。小麦に含まれているグルテンという物質(粘着力があって、食べ物をふわりとさせる成分)が、様々な病気の原因になっているのです。特に脳の働きに異常を来す病気、注意欠陥多動性障害・自閉症など子供たちの発達障害、うつ病、アルツハイマ
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ー型認知症、筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病、統合失調症、てんかんなどです。欧米では、自閉症の子供たちに、グルテン除去の食事を指導し、症状の改善をはかることはもはや常識になっています。日本はあまりに遅れています。
 小麦で作られる食品は、たくさんありますよね。パンだけでなく、パスタ、うどん、ラーメン、そうめん、お好み焼き、タコ焼きなどで小麦は使われます。グルテン過敏症が明らかな方は、小麦の完全除去が必要ですが、そうでない方は取りあえずパンを止めるのが良いと思います。パンはグルテンの多い強力粉が使われ、様々な食品添加物が含まれているからです。麺類は塩程度で食品添加物が少なく、お好み焼きやタコ焼きも具以外はほぼ小麦(グルテンがやや少ない中力粉)です。健康のために止めるべきパンとは、食パン(サンドイッチも含む)、ロールパン、コッペパン、フランスパン、ピザ、ナン、ホットケーキなどです。砂糖がたくさん使われている、菓子パン、スナックパン、ケーキ、クッキーも、当然止めるべき食品です。女性の方、子供たちには気の毒ですが・・・こんなことを以前から話している私の家庭でも、パンは食卓に出てきます。私の場合、家庭円満のために、パンは少し食べて残すようにしています、ハイ。


牛乳は決して健康食品ではない、モー毒です!
 以前のすずらん新聞でも取り上げましたが、牛乳は決して健康食品ではありません。その時にお話ししたのは、カルシウム豊富が売り文句ですが、牛乳のカルシウムは小腸からほとんど吸収されず、かえって骨をもろくする作用があること、牛乳に含まれているホルモン(牛の赤ちゃんを育てる成長ホルモンや牛の女性ホルモン)が前立腺癌の発症を増やすという2点でした。
 食に関するセミナーからの情報で、さらに牛乳が体に良くないことが分かりました。まず、牛乳に含まれているホルモンが前立腺癌ば
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かりでなく、乳癌発症のリスクも高めています。牛乳をよく飲む女性に、乳癌が発症しやすいというデータが出ています。
 「母乳は白い血液」といわれるほど、血液の状態を反映しています。牛乳は、まさに牛の血液です。ところが、乳牛には遺伝子組み換えのホルモンが打たれ、穀物にも遺伝子組み換え穀物が使われ、さらに、乳腺炎の予防のために抗生剤が与えられています。このように多くの異物が与えられている不健康な牛から取れる牛乳が、人間の体にいいはずがありません。
 牛乳に含まれる乳蛋白質の約80%を占める「カゼイン」は、α型、β型、κ型の3種類があります。人間の母乳に含まれるのはβ型ですが、牛乳に含まれるのはほとんどがα型です。ですから、牛乳に含まれるα型カゼインは、人間の体内では消化されず、うまく吸収できないのです。牛乳を飲むと下痢になる人が多いのはこのためです。便秘の改善のために牛乳を飲む人がよくいますが、これは吸収障害を利用しているもので健康的な方法ではありません。α型カゼインを頻繁に摂取すると、小腸に未消化物がたまって腸内に炎症が起こり、さらに、消化できないα型カゼインは体内でアレルゲン(アレルギーの原因物質)と認識されるため、遅延型アレルギーの原因になります。蕁麻疹、喘息、花粉症などは原因物質を摂取後にすぐに症状が出現する即時型アレルギーですが、遅延型アレルギーは数時間、数日後に症状が出ます。小麦に含まれているグルテンと同様、カゼインは遅延型アレルギーによって、様々な病気の原因になりうるのです。海外では、発達障害のある子供にはグルテンを含む小麦、カゼインを含む牛乳を除去する食事療法が積極的に行われています。
牛乳の健康神話はどうやって作られたのか?
 昭和41年アメリカの小児科医スポック博士が著した育児書が日本で出版されました。世界43ヵ国語に翻訳され、総売り上げが5000万部という世界的な大ベストラー本でした。その本には、「生後3ヵ月での母乳からの断乳」「子供には牛乳や乳製品を積極的にとらせる」などの指導内容が書かれていました。日本でも、この内容が栄養士に教育され、母子手帳もこれを基盤に作られたため、常識化したのです。第1版が出版されて40年以上経過した昭和63年、スポック博士は第7版の改訂をしました。その改訂版では、6版まで「とるべ
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き」としていた牛乳・乳製品を「とるべきではない」として、菜食を推奨する内容になったのです。ところが、この第7版は日本では出版されず、その訂正内容は広く知られないまま、今日に至っています。皆さん、どう思われますか?混乱をきたしたくないという国家的な圧力があったのではないでしょうか?
 朝食をパンと牛乳にしているご家庭も多いかもしれません。小さなお子さんのご家庭では、ぜひとも朝食はご飯を主食にしてもらたいものです。将来、アルツハイマー型認知症、うつ病といった脳の病気を予防する意味でも、パンと牛乳は止めるべき食材だと思います。学校給食では、依然としてパンと牛乳が出されています。様々な抵抗は予想されますが、給食でのパンと牛乳を止めさせる啓蒙活動に取り組んでいきたいと考えています。
 自閉症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害などの発達障害の子供が急増しています。アトピー、喘息、食物アレルギーなどアレルギー疾患の子供も増えています。この二十数年の間に子供による犯罪の急増にも、目を覆いたくなるものがあります。以前、すずらん新聞142~144号『メディア媒体が脳を脅かす』で取り上げましたが、テレビ、ビデオ、テレビゲーム、インターネット、携帯電話なのメディア媒体も大きな要因でしょう。
 最近、『給食で死ぬ!!』というかなり過激なタイトルの本を読む機会がありました。また、食の安全性に関するセミナーを受ける機会にも恵まれました。今回は2~3回に渡って、『食が子供をむしばむ』というタイトルでお話しさせていただきます。
給食を変えたらいじめ・非行・暴力が消えた長野・真田町の奇跡!!
 前述した本の副タイトルです。著者は大塚貢(みつぐ)、長野県生まれで信州大学卒業、中学校教員、東京での会社員生活を経て、平成4年に真田町の中学校校長に赴任しました。当時の様子ですが、中学校校舎内外に落ちているタバコの吸い殻を集めると、1~2
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時間でバケツ1杯分になったそうです。生徒は授業を抜け出し、外で群れてタバコを吸ったり、弱い物をいじめて現金を巻き上げたり・・・さらには学校外で空き巣をしたり、一人暮らしのお年寄りの家に行って脅したりする生徒もいて、ひどい状態でした(あの名将を生んだ真田家の町とは思えませんよね)。この校長がまずやったのは授業の改革です。「先生方の授業を見せてもらったけれど、ひどいよ。あれでは給料泥棒だよ。」とゲキを飛ばし、お互いの授業を見せ合って「分かる、できる、楽しい授業」を目指して、教師に切磋琢磨させました。教師側の努力で授業は改善し、非行や不登校も少なくなりましたが、大塚校長は他にも原因があると考えました。
 各競技大会に同伴して、大塚校長が気づいたことがありました。お昼にコンビニ弁当やカップラーメンを食べている生徒がいたということです。そこで競技大会の朝、5時から会場近くのコンビニ前で張り込んで様子をうかがいました。すると、親子が次々と車で乗りつけて、コンビニ弁当、カップラーメン、菓子パン、清涼飲料などを購入していました。このような生徒の多くが、おしなべて非行問題を起こしたり、いじめる側であったり、キレやすく、学習に無気力といった子供だったのです。そこで大塚校長は、食の現状調査を行いました。生徒の38%が朝食を摂らずに学校に来ていました。朝食を摂っていたとしても、菓子
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パン、ハム、ウインナー、化学薬品で味付けされたジュースなど・・・夕食にはレトルトカレーや焼き肉が多いというデータでした。コンビニ食品による食生活で栄養が偏り、野菜不足により必要なビタミンも摂取できていない、朝食を摂らない、これでは酸素や栄養分を最も必要とする脳は正常に働くはずがありません。イライラし、無気力になり、非行に走ったり、勉強する気も沸かない・・・そこで、大塚校長はPTA会合を開いて、食の現状や食生活の重要性を説明しました。ところが、若いお母さん方、特に問題を起こしている子供の親御さんほど、まるで理解してもらえませんでした。
給食を変えるしかない!
 このような状況の中で、大塚校長は一大決心をしました。「家庭で難しいなら、学校で食を変えるしかない」と。それまでの給食というと、子供も教師も好きな「菓子パン」「揚げパン」がありました。さらに主食は、中華麺、スパゲッティ、ソフト麺などで、ご飯は1週間に1度程度、副食は肉が主流という状態でした。これでは、家庭と学校の食事がほとんど同じです。そこで、主食はご飯にして、さらに副食は魚や野菜たっぷりのものに変えようとしました。生徒の健康を憂慮していた栄養士のI先生が、給食の変革にさっそく取り組みました。魚臭いイワシの甘露煮を出した時には、保護者のみならず、教師からも猛反発にあったそうです。「校長、あなたが給食費を出してくれるなら好きにやってもらっていいが、給食費は私たちが出しているんだ!」「今度の校長は疫病神だ!」と。
 そんなある時、栄養士のI先生が、32歳の若さで心筋梗塞で亡くなった人の心臓の生体写真を借りてきて、教師と保護者、さらに子供達に見せました。動脈にコレステロールが付着し、まるで石膏のようでした。心臓の周りにもたくさんの脂肪が付着しているのが分かりました。大塚校長は、「若くして死にたいなら、今までのような食事にしとけ!」と言い放ちました。この出来事から、食の改善に理解を示す教師、生徒が増えていきました。そして、大塚校長は、1週間の5食すべてを米飯に切り替える決断をしました。
子供達が本を読みだした!
 少しずつ、やがてははっきりと変化が見えてきました。まずは「読書の習慣」です。荒れている時には、子供はとうてい本を読む気にはなりません。ところが、給食内容を変えてしばらくした頃、休み時間になると、子供達がみな図書室に行って、本を読むようになったのです。図書室にある120の椅子が瞬く間に生徒で一杯になり、椅子が満席になると、床に腰を下ろして読んだり、廊下に出ても読んでいま
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す。感動的な光景でした。図書館司書の先生の努力もあったのですが、給食の変革がもたらした成果でした。読売新聞社の「全国小中学校作文コンクール」でも、特に何の指導もしないのに、毎年のように全国で1位、2位に入選するようになりました。
 大塚先生は校長を退任後、教育長として生徒に花作りをさせたり、無農薬、低農薬の素材を使った給食を実現させ、非行ゼロを実現させています。
 皆さん、給食を変えただけでまさかと思うかもしれません。この本を読んで、今から40年前の私の中学校時代を思い出しました。私が宮田中学1年生に上がってすぐに、新校舎に移りました。そこでは、全学年が一同に会して昼食ができるフロアがあって、給食センターからの配給ではなく、隣接する厨房で昼食が作られ、主食が米食という長野県初の試みがなされました。当時、中高校生の非行が社会問題化してきた時代でした。近隣の中学でも非行による事件が聞こえてきましたが、宮田中学では非行問題は全くありませんでした。米食が脳を健全化していたのかなと感じています。
 次回も、現代の食生活がいかに子供たちの脳をむしばんでいるかをテーマにお話しします。
 去る7月17日海の日、駒ケ根文化会館大ホールにて上記演奏会が開催されました。たくさんのお客さんにお越しいただき、聴く側も、演奏する側も、演奏会を支えたスタッフも、みな笑顔になれた演奏会でした。
 静岡児童合唱団の団員、私の患者さんからご寄稿いただきましたので、ご紹介いたします。また、皆様からいただいたアンケート、私がいただいたメールや手紙からの声もご紹介いたします。

心の糧
   静岡児童合唱団  中二 一條桃璃

 よく晴れた日の早朝。私達の演奏旅行は始まりました。
 一日目。バスにゆられて無事に長野県に入り、まず光前寺に行きました。そこにはこもれびカルテット
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の方々も来て下さっていて嬉しかったです。霊犬早太郎をまつったお寺ということで、早太郎のお墓もみられました。その後、「こもれびの家」で頂いたお夕食はとても美味しく、緊張もほぐれました。そして、夜のリハーサルでは、ホールの響きに慣れるのに時間がかかってしまい、本来の実力を出し切ることが出来ていなかったように思います。実は、お夕食があまりに美味しく、ついつい食べすぎてしまっていたため、思うように声が出せませんでした。少し反省しています。
 二日目。いよいよ待ちに待った本番当日です。午前中の練習では、一日目のリハーサルでの反省を活かした練習が出来ました。これからは一日目からそのような練習が出来ることを意識していかなければと思いました。
 そして迎えた本番。私は日頃の練習の中で先生から「自分にとっての二百パーセントの力を出し切ろう」と指導を受けているため、それが出来るようにしようという気持ちで、自分なりに精一杯歌いました。
 合同演奏では、こもれびカルテットの方々や混声合唱団「明日歌」の皆さんと歌わせて頂きました。立
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体的なハーモニーを十分楽しむことが出来たと思っています。四月の演奏会の時には、こもれびカルテットの方々が静岡に来て下さり、今回は三ヶ月ぶりにこうしてご一緒でき、前回に比べると心にゆとりをもって楽しみながら歌うことができ、この音楽会が素敵な思い出となり、また自分自身の心の糧ともなりました。今回の演奏旅行は、何人もの素敵な方々に囲まれながら、自分を成長・向上させるきっかけの一つとなったと思っています。学んだことも感じたことも、ここには書ききれないくらい沢山あります。今回、共に素敵な音楽会を創りあげて下さった皆様に心から感謝申し上げます。
 また三年後に前山先生をはじめ、駒ヶ根の皆様にお会いできることを楽しみに、これから三年間、心を新たにして、練習に励んでいきたいという気持ちでいっぱいです。
 本当にありがとうございました。
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演奏会に対する全般的なお声

★芸術的な作品から、親しみやすい作品まで幅広くて良かった。
★合唱の表現力がこれほど豊かなものは初めて聴きました。
★今でも感動の鼓動が残っています。4回目の音楽会は、言葉にならぬ程進化(深化)していました。努力の過程が結実していました。
★子供からお年寄りまで楽しめ、時間の過ぎるのが早く感じ、良いひと時を過ごせました。アンコールです!
★子供と共に楽しめ、2時間しっかり音楽にひたりました。歌って良いなあと感じました。
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★3年後にここに座ることが出来るのか、夫と今回が最後と思って感慨深く聴きました。四度目の公演で、企画も構成も今までと違った垢ぬけた感じがしました。
★スタッフの方々皆さんで作り上げた音楽会で、いつも素晴らしいと共感します。3年後も楽しみです。
★「こもれびカルテット」という名前のように温かな優しい雰囲気のコンサートだったと思います。
★会場全員が参加できるものをもう少し増やしてほしい。
★静児の美しいハーモニー、こもれびの力強い歌声、明日歌の大ホールを包み込む歌声がベストマッチして、とても良い演奏会でした。
★また来年もやって欲しいと思うくらい、趣向をこらした充実した内容で、あっという間の2時間で楽しめました。
★唐沢先生の大ファンになりました。お話しも軽妙で良かったです。
★アイデア一杯の楽しいステージで、最後まで飽きませんでした。
★大人も子供も楽しめる合唱。楽しく心が洗われました。平和な時が続きますように。
★大人と児童の歌声が一つになるステージは圧巻の一言。色々な事情はあると思いますが、可能なら毎年聴きたい!(ご勘弁ください)
★こもれびカルテットと明日歌の合同演奏会をもっとやって欲しい。今回だけで終わらせるのはもったいない。



静岡児童合唱団・こもれびカルテットに対するお声

<静児>
★ピュアな声が心にしみ込むようでした。
★ウィーン少年合唱団のような天使のような声、感動しました。
★低学年のお子さんもいらしたのに本当に凄いですね。大人になったら、素晴らしい合唱団で活躍されるでしょうね。
★低中高音での素晴らしハーモニー、圧巻でした。
★バリエーションが豊かで素的な歌声!たっぷり楽しみました。
★初めて聴きましたが、響きの素晴らしさにビックリしました。
★こもれびカルテットの追っかけしてきて良かったです。静児に出会えたんですから。
★すごく難しい曲を、しっかり歌い上げていて良かったです。
★透きとおるような高音が心地よく響き、それを男声がしっかり支えていて、すばらしかったです。
★子供さんだけの歌声を聴いてみたかった。
★エチュードは個性が色々出て楽しめました。小さな体であの声量はすごいです。

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<こもれび>
★パフォーマンスがとても面白く、目と耳で楽しめました。子供が楽しめる選曲で、客を飽きさせない終始楽しめるステージでした。
★楽しい楽しい、そして美しい響き、これからも応援しています。
★大漁節、縄を引くパフォーマンス、素的でした。
★ユーモアたっぷりのステージ。会場全体がニコニコになりました。先生のお人柄が表れていました。
★あわて床屋笑えてストレス解消です。緊張の中にも力強い歌声で心に響く。さすが癒し系ですね。一服の清涼剤です。
★観客層を考えれば、余りクラシックに走るよりいいと思います。
★観客との触れ合いを感じる密着感が良かったです。
★カルテットのハーモニー、保育士さんの踊り、良かったです。


癒されて
      宮澤かずゑ

 待ちに待った、第4回すずらん大音楽会が文化センターにて開催されました。お隣さんご夫婦をお誘いしていそいそと出掛けました。暑い日差しの中、子供さんの手を引き移動の方々が会場の中へ吸い込まれていきます。受け付けのスタッフの方々も、笑顔で迎えて下さいました。いよいよ開演。前列のいい席です。
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 こもれびカルテットの皆さん表情筋豊かで、相変わらずユーモアがあり楽しかったです。選曲も良く衣装の早変わりも感動的でした。子供さん方にも大受けでしたネ。皆さん忙しい中で、メンバー心を一つにして練習し、音色を大切に、そして、ダイナミックに男声合唱を表現されている姿に勇気と安らぎをいただきました。
 静岡児童合唱団の皆さん、天使のようなやさしさと落ち着いた歌声で、山のせせらぎの風景が浮かんで参りました。張りのあるソプラノの凛とした音色が心にしみ渡りました。日頃の練習の様子が目に浮かびます。オルガン、ピアノの先生方、長時間、本当にすばらしく感動していました。
 最後になりましたが、指揮者の先生、やさしそうで、しなやかで素的です。皆さんとコミニュケーション取りながら自分をしっかり出して、相手と向き合う姿に感動し、私たちみんな心癒されたと思います。
 真夏の日のひと時、音の森におさそいいただき、ありがとうございました。いやな事が多い今の世の中、音色を通して手をつなぎ、笑顔になれますよう祈りながら・・・・・。



合同ステージに対するお声

★久々の音楽授業で、合唱でのクラシックは初めてでした。解説がついて、分かりやすく楽しめました。
★すばらしい!明日歌とのコラボも良かったです。唐沢先生の指揮もすばらしい。「ステージ」大好き!
★とても感動で、涙があふれました。
★ピアノ伴奏が合唱にとけ込むようで、素的でした。
★クラシックの趣向が違って、とても新鮮でした。さすが唐沢先生、解説も分かりやす
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く楽しいです。
★フィンランディア、胸に響く重厚な歌声です。一番良かったです。
★ボリュームがあって、クラシックの良さも出て、重厚な中に高度な音楽を感じました。
★唐沢先生の指揮、平澤さんの伴奏、どちらも素晴らしかったです。特に最後の2
曲は、ステージの皆が一体となって感動的でした。
★クラシック音楽をコーラスとして歌う、というユーモアのある発想にとても驚いた。すばらしい演奏でした。
★歌っていいですね!心に染みました。良い思い出の1ページに刻まれましたこと、感謝いたします!
★人間味あふれる、レベルの高い音楽を体で感じられました。
ありがとう!


 一條さん、宮澤さん、ご寄稿ありがとうございました。
  皆さん、3年後をお楽しみに!
 前回号で3月からの道路交通法改正により、75歳以上の高齢運転者の認知症検査が強化されたお話をいたしました。先日、これに関する警察庁発表の報道がありましたので、
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ご紹介いたします。3月から5月末までに認知症のおそれがあると判定された高齢運転者は1万1617人に上り、そのうち1299人が医療機関を受診し、14人が免許停止となりました。また、3月から5月末までの75歳以上の運転免許の自主返納は5万6488件に上り、年間の自主返納は前の年と比べ大幅に増える見通しとなったようです。今後、高齢者による交通事故が減少に転じていけばいいですね。さて、今回は現在行われている認知症の治療、そして今後期待されている治療についてお話しいたします。
現在の認知症治療薬
 日本国内では現在、4種類の薬が認可されていますが、残念ながら認知症の根本的な治療薬ではなく、病状を遅らせるお薬です。2つのグループに分けられ、1つがア
セチルコリンエステラーゼ阻害剤です。アリセプト(ドネペジル)、レミニール、リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ(張り薬)の3つがあります。認知症では、脳内での神経伝達物質アセチルコリンが減少しているため、このアセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼという酵素を阻害することで脳内のアセチルコリンを増やし、認知機能を高めるお薬になります。副作用として嘔気や下痢などの消化器症状、興奮などの精神症状があります。張り薬では、貼付部位のかゆみや発赤などの皮膚症
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状があります。保険上適応となるのは、現在のところアルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症(アリセプトのみ)です。
 もう1つのグループに属するのがメマリーです。認知症患者の脳内では、異常な蛋白質によって神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰な状態になっています。メマリーは過剰なグルタミン酸の放出を抑えて、脳神経細胞を保護する働きがあります。副作用として、めまいやフラツキがあります。アリセプトとは作用機序が異なるため、アルツハイマー型認知症が中等症まで進行した時に、アリセプトにメマリーを併用するという治療も行われています。
薬物療法以外の認知症治療
 これらのお薬を使って、認知症の進行を抑えるというのが現在の治療の主流になっていますが、副作用により薬が使用できない場合もあります。認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」の段階から薬物療法を開始した方が予後良好と考えられており、実際の医療現場でも、早期に薬物療法を開始する場合が多いと思います。
 最近、国立長寿医療研究センターが発表した興味深い研究結果があります。認知症でない65歳以上の愛知県大府市の住民約4200人を4年間追跡したものです。国際的なMCI判定基準をもとに検査したところ、研究開始時点で約740人(18%)がMCIと判定されました。ところが、4年後に同じ検査を行うと、MCIだった人の46%が正常範囲に戻っていたというのです。MCIと判定されても、約半分の方が正常に戻ったということは、加齢以外の別の因子が働いたということだと思います。おそらく、MCIと判定された方々あるいはその周囲の人の働きかけで、脳活性化リハビリテーション(いわゆる脳トレ)が行われた結果ではないかと推察します。私の患者さんの中にも、副作用で薬物療法ができないアルツハイマー型認知症の患者さんで、病状があまり進行しない、以前よりも病状が良くなっている方が数人いらっしゃいます。脳活性化リハビリテーションが効果を上げているのでしょう。脳活性化リハビリテーションについては、また改めて取り上げたいと思っています。
開発中のアルツハイマー治療薬
 アルツハイマー型認知症の初めての治療薬アリセプトを開発したのは、日本の製薬会社エーザイです。アリセプトは前述した通り、認知症の進行を遅らせるいわゆる「対症療法」の治療薬でした。そのエーザイが今、3年後の2020年以降の販売に向けて準備を進めている2つの新薬があります。これらの新薬は、対症療法ではなく根本治療になるお薬として期待されています。
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 正常な脳から、アルツハイマー型認知症が発症するまでの過程の模式図を示します。鍵を握っているのが、「アミロイドβ」と呼ばれる蛋白質と、これが凝集してできる「アミロイドβフィブリル」という物質です。これが蓄積すると、脳に黒い斑点(老人斑)ができ、このアミロイドβフィブリルと老人斑が、神経細胞を殺していると考えられています。
 世界中の製薬会社は、左図に示した通り、脳にダメージを与える物質が生成される各過程に介入して、異常な物質の生成を抑える薬を開発しています。エーザイは、バイオベンチャーの米バイオジェンと共同でBACE阻害剤と抗アミロイドβプロトフィブリル抗体を開発しました。前者は治験の最終段階であるフェーズ3、後者はフェーズ2の状況です。これらの根本的な治療薬が登場すると、アルツハイマー型認知症を早期に発見し、早い段階から治療を始めれば、症状が深刻になる前に寿命を終えられる患者、つまり健康寿命の長い方々が増える可能性が出てきます。つまり、認知症患者を社会の「お荷物」から「稼ぎ手」に変えることができるかもしれません。
日本の国民皆保険を守ろう!
 私が医者になってから、色々な治療薬が出てきました。生活習慣病の治療薬、抗癌剤など、創薬により、多くの人々がその恩恵を受け、健康寿命を延ばしていると実感します。日本が世界に誇れる長寿国になっているのは、国民全員が平等に医療の恩恵を受けられる「国民皆保険」のお陰だと思います。この素晴らしいシステムを継続するためには、国民一人一人が節度をもって、医療保険を利用すべきでしょう。あちこちの医療機関を受診しまくる、医療保険を利用して様々な薬の投薬を医師に迫るなど、限りある医療財源を浪費するようなことは慎むべきと感じております。

 前回号では、①認知症とは?②認知症を疑ったらどうする?③認知症は誰もが避けられない、だから健康長寿を目指そう、といった内容をお話しいたしました。折しも先月4月下旬に京都市で認知症国際会議が開催されました。認知症は今や地球規模の問題になっています。社会が認知症患者とどう向き合っていくのかが話し合われました。認知症に優しい社会の実現には、当事者の視点が欠かせないという意見が多く出されたようです。今回は日本において、社会が認知症患者とどう向き合っているのか、また、今後どう向き合っていったらいいのか、などについてお話しします。
高齢者による交通事故の問題について
 皆さんご存知のように、高齢運転者による交通事故が相次いでいます。警察庁によると、日本全体では交通事故による死亡件数は減っています。ところが、75歳以上の高齢運転者による死亡事故件数の全体に対する割合は2005年7・4%であったのに対して、2015
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年では12・8%までに増えています(左図参照)。自動車大手各社ではここ数年、軽自動車を含む新車への衝突防止機能の搭載を加速させています。ただし、ほとんどの中古車には搭載されていないため、高齢者の手に届くほど十分に普及していないのが実情です。
道路交通法の改正について
 相次ぐ高齢者による交通事故が社会問題化したのを受けて、今年3月道路交通法が改正されました。従来は75歳以上の運転者は、3年に1度の免許更新時に認知機能検査を受けることが定められていました。新しい改正法では、免許更新時に加えて、信号無視や逆走など認知症の影響とみられる18項目で違反した場合も認知機能検査が義務付けられました。この検査では①「認知症のおそれがある」、②「認知機能の低下のおそれ」、③「認知機能の低下のおそれなし」の3段階に分類されます。①「認知症のおそれがある」と判定された場合は医師の診断を受けなければなりません。認知症と診断されれば、免許取り消しや停止となりますが、これは従来の法律と変わっていません。①で認知症と診断されなかった高齢者、②③の高齢者は、分類に応じて2時間から3時間の講習(実車指導、個別指導)を受けることになります。
新しい改正法の問題は?
 今回の改正法は認知機能をこまめにチェックする機会を設けたことが特徴で、一定の効果が期待されています。一方で、医師側からは心配の声が上がっています。対象範囲が拡がったことで、診察数が増え、ただでさえ認知症を専門とする物忘れ外来は予約がいっぱいなのに、対応できなというわけです。また、認知症でないと診断された高齢者が事故を起こした場合、刑事上の責任はないものの、民法上の責任を問われる可能性があるからです。私自身も患者さんから運転免許更新の相談を何件か受けたことがありますが、その方の生活に関わることでもあり、社会的な責任もある事柄であるため、認知症専門医に紹介させていただいています。
 日本では、認知症と診断されれば一律免許取り消しとなりますが、オーストラリアのビクトリア州では、認知症の人でも実際に運転してもらうなどして個々の能力を判断し、運転を認めている所もあります。日本でも初期の認知症であれば、一人一人の運転技量等を確認し、運転の可否を総合的に判断する仕組み作りの構築を求める声が上がっています。一方で、日本の社会では依然として「認知症の方は危ない行動をするに違いない」という思い込みも根強くあり、なかなか難しい問題かと思います。
全国に広がる「認知症カフェ」「認知症サポーター」
 2015年政府は「認知症の人やその家族の視点の重視」などを理念とする国家戦略として「新オレンジプラン」を発表しました。その柱となっているのが「認知症カフェ」です。「オレンジカフェ」とも呼ばれますが、常設の店舗ではなく、自治体やNPO法人などが開催する交流の場になっています、現在、全国で2000カ所以上あります。私が10年来往診を続けている認知症で寝たきりのYさんのお宅では、1年半前からこの「認知症カフェ」を個人で始めています。Yさんの介護をずっと続けている娘さんは、「認知症とどう向き合えばいいか悩んでいる家族は多いです。同じ境遇だからこそ分かりあえるし、助言もできるし、支え合うことができます。」と話していました。
 先月京都で開催された認知症国際会議で日本から発表されたのが「認知症サポーター」です。恥ずかしながら、私も新聞記事で今回初めて知りました。十二年前に厚生労働省が始めた、認知症を正しく理解し、偏見を無くすための取り組みです。認知症の症状や本人への接し方、場面に応じた支援の方法について学ぶ約九十分の無料講座を受講すると、認知症サポーターと認定されます。日本ではこれまでに、自治体や職場などで約26万5千回の講座が開かれ、約883万人のサポーターが生まれているそうです。日本発の認知症サポーターは世界にも広がり、日本はじめ十一カ国で活動が行われています。認知症の家族がいなくても、認知症患者に優しい社会を作っていくため、認知症サポーターがどんどん広がっていけばいいですね。皆さんも受講してみませんか。お問い合わせは、「全国キャラバン・メイト連絡協議会」TEL03‐3266‐0551になります。
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2025年問題にどう向き合っていくのか?
 あと8年後の2025年には、団塊の世代が一斉に75歳以上になります。国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類が経験したことのない超・超高齢化社会となります。10人に1人が認知症という時代がすぐそこまで来ています。日本は3年後の東京オリンピックで大いに盛り上がることでしょう。ですがその後、若者が減り老人が増え、物作り日本を支えてきた生産人口は大幅に減り、介護や葬儀に携わる人が激増する、まさに国全体が老境化する状況が心配されています。どうすればいいのでしょうか?認知症が誰でもなる病気であるならば、自立を望む当事者には必要なサポートをして働いてもらう、加えて、介護離職者を増やさないような柔軟な働き方を実現していく働き方改革が必要になります。日本が認知症に負けないために大切なのは、認知症患者を社会のお荷物と考えるのではなく、社会の担い手の一員であるという認識を持つことではないでしょうか。
 次回は、今期待されている認知症の治療についてお話しいたします。
 クリニックを開業してこの4月で十六年目を迎えました。開業当初より通院してくれているMさんという九十一歳の男性の方がいらっしゃいます。背筋がすっと伸びていて、声もしっかりされていて、七十歳でも通るような若々しい方です。Mさんは診察の度に「すずらん新聞はいい。いつも楽しみで読ませてもらっている。」と誉めてくれます。4月の初めに受診された時「先生、今度は認知症のことを書いてくれや。」と言われました。何度か認知症のことはこの新聞でも取り上げているのですが、Mさんの頼みとあっては断れません。『認知症と向き合う』と題して、3回に渡ってお話したいと思います。
認知症とは? 認知症を疑う症状は?
 外来で七十歳以上の患者さんともなると「最近、人の名前が出てこなくなった。物の置き忘
れが多くなった。認知症が心配だ。」という声を聞きます。そんな時によく行うのが欧米では標準的な認知症スクリーニング検査であるMMSEです。Mini-Mental State Examinationの略称で、言語性設問の他に、紙を折る問題や文章や
認知症①.jpgのサムネール画像図形を書く問題などの動作性の設問があります。総計11問で30点満点になっています。24点以上で正常と判断します。MMSEに加えて、頭のCT検査も行います。ほとんどの場合、MMSEは合格点で、頭のCT検査では年齢相応の委縮がある程度で、認知症とは診断されない、
いわゆる加齢に伴う物忘れと診断する場合が多いです。MMSEが23点以下で、頭のCT検査で萎縮が目立ったり、小さな脳梗塞の跡が多発している場合は認知症を疑い、専門医に紹介することになります。
 認知症とは「脳の病変によって、記憶を含む複数の認知機能が後天的に低下し、社会生活に支障をきたすようになった状態」です。人の名前がなかなか出てこないくらいは心配ありません。ところが、自分が体験したことそのものを忘れてしまうという状態は、本人にとってその体験は存在しない、つまりヒントがあっても思い出せないことになるので、認知症が疑われます。記憶障害の他に大切なポイントは、その人らしさが失われたかどうかという点です。以前は問題なくできていた仕事や家事がうまくこなせなくなった、通い慣れた道なのに迷うことがある、身だしなみを気にしなくなった、などです。
 新しい事が覚えられないので、日常的に同じことを繰り返し聞いてくる。物をしまった場所を忘れるので、探し物が多くなり、やがて誰かが盗ったという妄想へとつながりやすくなります。やる気を失って、うつ状態になる場合もありますし、においに鈍感になる点も前兆として大切です。
 認知症の初期には、本人は戸惑いや不安を自覚することが多く、何とか取りつくろって、その場を切り抜けてしまうことが多いです。相手の話に合わせて「そうそう、それだった」などと思い出したふりをする場合もあります。ですから、電話での応対では多少やり取りに不自然なところがあっても、それなりにしっかりした会話ができてしまいます。認知症を初期に見つけるには、数日一緒に生活してみて、自分の目で色々を確かめることが大切です
認知症を疑ったらどうすればいいか?
 私が定期的に診ている患者さんの家族から、時々「最近物忘れが多く、認知症が心配だ」とこっそり連絡があります。この場合は、受診した際に「何々さん、お歳もお歳だし、脳の働きもチェックした方がいいから、ちょっと検査しておこうかね」とお話して、前述したMMSEと頭のCT検査を行います。このパターンは大丈夫です。ところが、日頃かかりつけ医がなく、自分の親に認知症が疑われた場合は、ちょっとやっかいになります。たいていの親は、自分の子供に「認知症では?」と言われれば怒り出すことが多いからです。親としてのプライドがあるから当然と言えば当然です。だからと言って、本人にごまかして認知症専門の医療機関に連れて行った場合、初期であればあるほど、認知症の人はすぐにだまされたことに気づき、その後はどんなに説得しても病院には行かない可能性があります。家族との信頼関係が崩れ、家庭内では家族を攻撃するような悲惨な状況になることもあります。
 どうすればいいのでしょうか。いきなり認知症専門の医療機関に連れていくようなことはせず、近場の開業医の先生のところに健康診断という口実で受診してもらって、認知症の検査も合わせてやってもらうというのがいいかと思います。そこで、認知症が疑われれば、改めて専門の医療機関に紹介してもらう、これが無難な方法かと思います。そういった意味で、定期的にかかるような病気がなくても、風邪などをひいた時に面倒をみてもらう、かかりつけ医を作っておくことは大切といえると思います。
誰もが認知症からは避けられない!
 ちょうど1年前のすずらん新聞第169号『認知症予防と健康長寿のツボ~前編~』でも取り上げました。2012年での認知症患者は462万人でしたが、今から8年後
認知症患者推計2.jpgのサムネール画像
の2025年には認知症患者は約1・5倍の700万人になると推計されています。認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)を加えると、約1300万人となり、65歳以上の3人に1
人は認知症患者とその予備軍となるわけです。日本を代表する神経内科医で、東京女子
医科大学名誉教授の岩田誠医師は「人間には二通りの生き方しかない。認知症になるまで長生きするか、その前に亡くなるか。」と。長生きしたいなら、できるだけ認知症の期間を短くして、
健康長寿を目指すしかないわけです。そこで、私が提案したのが『認知症予防と健康長寿のツボ五箇条~長寿遺伝子を活性化させる生活を~』です。詳しくは第169号、170号を参考にしていただきたいと思います。
 次回は、認知症患者の増加に伴う社会的な問題を取り上げてみたいと思っています。



 前回は緊張型頭痛、片頭痛についてお話しいたしました。今回は新しい疾患概念『脳過敏症候群』を取り上げます。私自身も今回、頭痛の勉強をし直して初めて知った疾患名です。私の診ている患者さんの中にも、この病態に当てはまるような方もいらっしゃると思いましたので、紹介したいと思います。
『脳過敏症候群』とは?
 2011年、東京女子医科大学脳神経外科の研究チームが、頭痛に関する長年の臨床経験から提唱した、頭痛の診断の新しい考え方です。
 脳過敏症候群は、片頭痛などの一般的な頭痛もちの患者さんが、長期間くり返し鎮痛剤を使い続けるなどの不適切な対応を続けることで、引き起こされます。反対に、「頭痛なんか病気じゃない、がまんしていれば治るはず」と何の治療もせずに放置していても引き起こされます。日本では欧米に比べると頭痛を病気として認識していない方が多く、慢性的な頭痛があるのに医療機関を受診しないケースが多いようです。
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 脳過敏症候群の症状としては、耳鳴り、めまい、難聴の他に、不眠症状、不安感、抑うつ感などがあります。物忘れが激しくなる、イライラして攻撃的になる、奇行を繰り返すというケースもあります。また、認知症、うつ病、パニック障害だと思われていた人が、実は脳過敏症候群だったというケースもあるようです。
 私が診てきた患者さん、特に女性に多いのですが、前記のような症状があって、頭のCTやMRI検査でも異常がなく、耳鼻科で診てもらっても特に異常を言われないという患者さんがこの病態に当てはまるのではないかと思っています。
脳過敏症候群の原因
 一般的に、片頭痛の痛みは、年齢を重ねるとともに減弱していくことが多いです。片頭痛は、脳の血管が異常に拡張して、血管周囲にあるセンサーの役目を果たしている
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三叉神経への刺激が元になり、大脳が興奮することが原因で起こります。ところが、中高年になると、脳の血管は動脈硬化を起こし、異常な血管拡張が起こりにくくなります。そのため、三叉神経への刺激情報を伝わりにくくなって、痛みが減弱するというわけです。
 しかし、痛みが減弱しても大脳の興奮が鎮まったわけではありません。片頭痛の度に大脳が興奮を繰り返すと、後頭葉や側頭葉、さらには視床という感覚の中枢から、小脳というめまいや平衡感覚に関連した部位にその刺激情報が繰り返し伝えられます。結果として、脳の各部位は正常に働かなくなり、前述したような脳過敏症候群の症状が引き起こされると考えられています。
脳過敏症候群の診断
 どの診療科を受診しても、「原因がわからない」「不定愁訴」などといわれ、たらい回しにされ、症状を抑えるための薬を次々に処方されてきた患者さんが多いようです。そうした症状も脳の過敏性の高さによるものだと分かれば、適切な治療も可能です。
 まず、大切なのはこれまでの症状や経過などをきちんと聴取する問診です。次に症状に応じて、頭のCT検査、MRI検査を行って、他の病気でないかを調べる除外診断が必要です。その上で、脳過敏症候群が疑われた場合は、脳波検査を行います。脳波検査は、覚醒時と時に睡眠時の記録をそれぞれ20分程度行います。あらゆる周波数の光刺激を行い、後頭葉からの刺激波が脳のどのあたりまで波及するかを観察し、診断していきます。
 南信地区で、こういった診断ができるのは、日本頭痛学会認定頭痛専門医のいる昭和伊南総合病院脳神経外科や、瀬口脳神経外科病院になります。自分が脳過敏症候群ではないかと思われる方は紹介いたしますので、お申し出ください。
脳過敏症候群の治療
 脳過敏症候群の治療は、根本にある脳の興奮を鎮め、過敏さを和らげていく薬物療法が基本になります。抗てんかん薬、抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)などを投与し、まず、脳の興奮を抑えます。脳の興奮が鎮まると、一時的に本来の頭痛発作が出ることもありますから、その際は前号で紹介したトリプタン製剤を服用します。元の片頭痛発作が頻回になることはないそうです。
 慢性的な頭痛に悩んでいても、医療機関を受診せず、市販の頭痛薬で対処している方が多いかと思います。月に1~2回程度の頭痛発作であれば問題ありませんが、10回以上の発作がある方は、医療機関を受診しましょう。また、「薬を飲まずにがまん!」という対応は、さらに問題です。過去にそのようなことをしていて、耳鳴り、めまい、難聴、不眠、不安感などの症状がある方は、脳過敏症候群に移行している可能性があります。医師にご相談ください。
医療法人すずらん まえやま内科胃腸科クリニック ご予約・お問い合わせ 0265-82-8614