昨年12月2日、医療法人すずらんの忘年会がアイアパル伊南で開催されました。クリニック、こもれびの家、すずらん病児保育室のスタッフ総勢40名程の会でしたが、私にとっては思いもかけない贈り物がありました。クリニック開業15周年を記念しての私へのビデオレター。クリニック、こもれびの家、病児保育室のスタッフ、私の師匠小出俊美さん、混声合唱団明日歌の団員の皆さんからのメッセージでした。私は15周年という節目を全く考えておらず、皆さんからの温かな言葉に、思わず涙があふれました。今回は医療法人すずらんの15年を振り返ってみたいと思います。
クリニック15年平成十四年四月一日、『思いやりの医療、良質でわかりやすい医療、健康を保つ医療』をスローガンに掲げ、まえやま内科胃腸科クリニックは開業しました。クリニックに来るとホッとできる空間を目指して、待合室は高天井のゆったりスペースにし、クリニック周囲には緑を多くしました。スタッフは心のこもった応対をしてくれています。病院並みの検査機器をそろえて検査結果をその日のうちに伝える、口頭だけではなくクリニック独自の健康手帳や検査データに私のコメントを記してお渡しするなど、きめ細かな診療をしてきました。
その副産物が、患者さんの待ち時間が長くなることです。現在、予約の患者さんでは1時間から1時間半、予約外ですと2時間から3時間の待ち時間になっていますが、過去にはそれ以上の待ち時間が発生し、クレームは後を絶ちませんでした。平成二十年からの電子カルテの導入により、看護師にできるだけ患者さんからの問診内容をカルテに記載してもらうなど、私の診療業務時間の短縮化をはかり、ここ数年は待ち時間に対するクレームは少なくなったように感じます。おそらく、待ち時間が長くても私の診療スタイルに理解をしてくれる患者さんが、クリニックに通い続けてくれていると思います。感謝の気持ちでいっぱいです。
この規模で人間ドックを行っている診療所は珍しいと思います。病院で行われている内容と変わらず、開業以来費用は3万円のまま据え置きで、破格の安さになっています。一日一名の対応ですが、リピーターも多く、病気を予防する、健康を保つ意味で貢献できているのではないでしょうか。
さて、ここで下にある絵の説明をします。これは第二診察室に飾られていますが、第一診察にも同じような女の子の絵があります。診察の際、多くの患者さんから「この絵はいやされるね~」と言っていただいています。実はクリニック開業の際、当時小学校2年生だった長女が描いてくれたものです。今思うと、この女の子は長女が自分自身を描いたもので、「パパ、お医者さん、がんばってネ」というメッセージだったような気がしています。その長女は今24歳、医学部6年生です。来春には医師になる予定で、最近になって胃腸科を専攻す

内視鏡実績についてお話します。この十五年間で胃カメラは1万8千480件、大腸カメラは9千314件行いました。入院なしで日帰りで大腸ポリープを内視鏡的に切除できる長野県で数少ないクリニックですが、十五年間で6千744件の大腸ポリープ切除術を行いました。出血によるショック(血圧低下)は10数例程あったでしょうか。昭和伊南病院や伊那中央病院へ入院になった症例は5例程あったかと思います。穿孔例(大腸の壁に穴をあける)、死亡例、手術に至った例はありません。開業医が入院なしで行うのは大きなリスクがあります。冷や汗をかく場面もありましたが、この十五年で私も技術的に大きく進化しました。看護師はびくびくしながら、私の内視鏡処置の助手を務めてくれました。よくぞ私についてきてくれたと感謝しています。今は仏のようになった私のもと、日々穏やかに助手をしてくれています???
子供への思い
私は五人の子宝に恵まれました。今は4歳9ヶ月と1歳8ヶ月の男の子と暮らしています。56歳になる私にとってあまりに小さな子供たちです。大きな責任を感じます。トライアスロン、フルマラソンからは手を引きました。7時間の睡眠時間を取って、家内には食事内容に気を配ってもらい、健康管理はきちんとしているつもりですが、アルコール摂取量はまだ多いかもしれませんね(反省!)。
平成28年2月より育児支援としてクリニック2階で『すずらん病児保育室』を立ち上げました。待ち時間が長い当クリニックでは、子供には敬遠されてきましたが、小児診療の機会が増えました。発達障害のある子供、母子家庭の子供、虐待されている疑いのある子供・・・自分の子供にも発達障害があり、そんな中で私の子供たちへの思いが深くなっていった気がしています。平成29年5月より看護大学生のボランティアによる無料学習塾『すずらん放課後学び塾』を開始しました。今年5月からは宮田村小中学校の発達障害児を対象にした放課後等デイサービス『宮田わくわく学び塾』を立ち上げました。スローガンは「わくわく笑って、ワンダフルに変身」です。子供の改善を目指すには、親御さん自身が変わらなければなりません。私もまだまだですが、自分の息子と共にワンダフルに変身すべく日々努力しています。そんな私の現在進行中の子育ての経験のお話をしながら、宮田村の未就学の発達障害あるいはその疑いのあるお子さんの親御さんとの懇談会を今月から始めました。
皆さんも虐待死した船戸結愛(ゆあ)ちゃんの報道には、胸が締め付けらる悲しみを感じたと思います。子供の権利や安全を守って、一人でも多くの子供たちが将来伸び伸びと生きていけるような支援をしていかなくてはなりません。それには、地域社会全体で子供たちを育てていく意識、仕組み作りが必要と感じています。医療法人すずらんは、これまで通り、医療・介護で社会に貢献して参りますが、子供たちの未来を明るくするための取組みにも積極的に関わっていきたいと思っています。応援をお願いいたします。
【院長 前山浩信】