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最新ニュース&トピックスの最近のブログ記事

 前号では、コンビニ食品で防腐剤としてカルキ(次亜塩素酸ナトリウム)が多量に使われていること、パンや牛乳の摂取が様々な病気の原因になっていることをお話しました。コンビニ食品はできるだけ控えて面倒でも手作り弁当にしましょう、朝食がパンと牛乳になっているご家庭なら、ご飯にみそ汁に変えましょう、というお話でした。
 私の患者さんで、昔、食肉製造会社の社長さんだった方が前回の新聞を読んで、こんなお話をして下さいました。この方は、上伊那地域で初の添加物(カルキなど)を使用しない体にいいハムを作ったそうです。ところが、色合いが悪いために売れなくて、製造を止めたそうです。もう一つのお話ですが、50年程前に会社の社員の奥さんが、スイカに塩と間違えてカルキをかけて食べてしまい、亡くなった事件があったそうです。誰でも食品添加物への関心がないと、見た目はいいけれど体には良くない食品を選んでしまうこと、そして、食品添加物の恐ろしさを伝えてくれるエピソードでした。
やめるのは牛乳だけか、乳製品もダメなのか?
 前号の新聞を読んで、何人かの方から「乳製品もダメですか?」という質問を受けました。牛乳には、人間の体では消化されにくいカ
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ゼインが多量に含まれていること、乳牛に遺伝子組み換え成長ホルモンや抗生物質が多量に投与されていること、エサに遺伝子組み換え穀物が使われていることなどを考えれば、完全に止めるべき食品です。一方、乳製品はどうでしょうか?代表的な乳製品としては、ヨーグルト、チーズ、バターがあります。ヨーグルトとチーズは発酵食品で、カゼインはかなり分解され、牛乳よりも消化が良くなっていますので、大丈夫です。また、ヨーグルトやチーズには乳酸菌が含まれていますので、腸内の善玉菌を増やすという健康効果があります。ただし、ヨーグルト摂取でお腹の調子が悪くなる方もいますので、そういう方にお勧めの発酵食品は納豆です。チーズですが、プロセスチーズは加工品ですので控えて、ナチュラルチーズを選びましょう。バターはほとんどが脂質で、カゼインは極めて少ないので大丈夫です。
パンはなぜ止められないのか?
 前号の新聞を読んで、「でも、パンってむしょうに食べたくなるんだよね~」という方が何人かいました。実は、パンを食べると体内で
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「モルヒネ」と似た物質が作られるんです。グルテンが分解される途中でできる「エキソルフィン」という物質です。モルヒネには強い鎮痛作用があるのと同時に、強い依存性があることは皆さんご存知でしょう。モルヒネ様物質エキソルフィンが脳内に作用して「幸せ感」をもたらし、さらに繰り返して食べたくなる中毒症状が引き起こされ、食欲も亢進させるので、さらにパンを食べ続けてしまうのです。実は、牛乳のカゼインが分解される過程においても、このエキソルフィンが作られています。朝食をパンと牛乳にすると習慣化してしまうのも、この辺に原因があるのかもしれませんね。
トランス脂肪酸の多い食品はひかえよう!
 「油脂」「あぶら」「脂肪」などと呼ばれる脂質は、私たちの体に必須の栄養素です。食事で脂質をとると、脂肪酸とグリセリンに分解されて使われます。特に、細胞膜の成分として重要なのが脂肪酸です。人体にとって不自然な構造を持っていて、異物と認識される脂肪酸、それが「トランス脂肪酸」です。市販のパンやお菓子によく使われているショートニングやマーガリンは、液体の植物油が常温で半固
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形になるように、水素を添加して作った油です。トランス脂肪酸はこれらに多量に含まれています。マヨネーズ、コーヒーに入れるミルク、インスタント食品、レトルト食品、ファーストフード、冷凍食品にも多く含まれています。
 脂肪酸は全身の細胞膜の原材料です。トランス脂肪酸も不自然な構造とはいえ、体に吸収されます。固形化されたトランス脂肪酸が細胞膜に入り込むことで、細胞膜の流動性がなくなり、固まった状態になります。脳の細胞に取り込まれると、脳の神経伝達物質がうまく伝わらず、うつ状態に陥りやすくなります。細胞どうしの連絡が滞るため、あらゆる病気にかかりやすくなります。癌、動脈硬化、不妊、聴覚障害、免疫障害、糖尿病、心臓病など、様々な障害に関与します。トランス脂肪酸を過剰に摂取している人は、攻撃的な性格や、うつ病になりやすいという報告もあります。
 トランス脂肪酸は、欧米では2000年代前半から使用が規制されています。数年前には、ニューヨークのマクドナルドでショートニングの使用が禁止になり、アメリカ全土で表示の義務化や使用禁止の動きがみられています。日本ではトランス脂肪酸の摂取量が、WHO勧告の1%未満をクリアしているという理由で、規制は全く行われていません。ですが、健康被害が明らかなトランス脂肪酸の摂取は、できるだけひかえた方が得策です。
 前述の食品の他に、自然の油も加熱処理するとトランス脂肪酸が発生します。植物油に多く含まれるリノール酸も、加熱で酸化しやすくトランス脂肪酸が発生しやすい油です。植物油というと体に良いような印象を受けますが、コーン油、ベニバナ油、ごま油、グレープシード油、ひまわり油などはリノール酸をたくさん含んでいます。米油、亜麻仁油、えごま油、しそ油、ココナッツオイルなどの油が安全です。いい油でも、高温で長時間加熱するとトランス脂肪酸が作られます。できるだけ質のいい新鮮な油を生でとるようにして、揚げ物はひかえめにしましょう。油ものを電子レンジでマイクロ波加熱することも、トランス脂肪酸を多量に発生させますので、注意が必要です。
大型魚の摂取はひかえよう!
 昨年の十一月東北大チームの免疫調査の結果が発表されました。マグロやカジキなどメチル水銀を比較的多く含む魚介類を妊婦が食べ過ぎると、生まれた子の運動機能や知能の発達に悪影響が出るリスクが増すことがわかりました。メチル水銀は水俣病の原因物
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質ですが、一般的な食用に問題のない低濃度の汚染でも、胎児の発達に影響する可能性があることが日本人対象の調査でも初めて明らかになりました。水銀を多く含んでいる魚は、マグロ、カツオ、スズキ、カジキ、キンメダイなどの大型魚です。水銀の毒性で一番恐ろしいのは、神経細胞の正常な発達を妨げることにあります。現在、爆発的に増加している子供たちの自閉症、注意欠陥多動性障害といった病気の関連も疑われています。子供たちには、大型魚をできるだけ摂取させない配慮が必要だと思います。
アマルガムの問題
 歯科治療で歯の詰め物として使われる「アマルガム」、皆さんはあまりご存じないかもしれません。実は、昨年4月までこのアマルガムが保険適用の歯の充填物として使われていました。アマルガムには無機水銀が約50%含まれていて、体温で口腔内に容易に気化・蒸発しています。ドリルで安易に削ると、水銀が蒸気となって拡散し、患者は基準値の何千倍もの濃度の水銀蒸気にさらされることになります。当然、治療に当たる歯科医も水銀蒸気を吸い込むことになります。昔の歯医者さんは、手袋をせず歯科治療をしていましたから、アマルガムから多くの水銀を体内に取り込んでいた可能性があります。昨年4月からアマルガムは保険適用から撤廃されましたが、皆さんの歯に残っている方も多いかもしれません。
 現在の歯科治療ではアマルガム始め金属類の詰め物をひかえて、できるだけセラミックにしているようです。ただし、セラミックは金属
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に比べると柔らかいため、耐久性に問題があるようです。ですが、健康のことを考えれば、歯科の詰め物にはセラミックを選択すべきと思います。アマルガムが歯に残っていて、セラミックに切り替えたいと考える方も多いかもしれませんが、一つ注意があります。先ほどお話した通り、アマルガムをドリルで削ると水銀蒸気が発生します。理解のある歯科医は、アマルガムを除去する際、自身は防毒マスク・完全防護衣の上で、室外排気の環境下で治療をし、ドリルで削る際には、患者に息止めをさせるなどの配慮をしているようです。安易なアマルガムの除去をされると、かえって健康被害を招く恐れがあります。ご注意下さい。
 「食が子供をむしばむ」と題して、3回に渡ってお話いたしました。子供の脳は10歳くらいまで成長しますが、それまでの脳の発達具合で、その子の人生は決まっていきます。現代において、食の環境は大変便利になりました。一方、体には良くない、毒といってもいいような食品がちまたにあふれています。大人の無理解で、食事によって子供が被害を受けることがないように、口から取るものに細心の注意が必要ではないでしょうか。

 前号では、長野県真田中学校での給食変革による奇跡をお話しいたしました。給食を米食にして、地産地消の素材で、無農薬、低農薬の食事に変えたら、非行問題がゼロになったという今から20年程前にあった本当のお話しです。今回は、どんな食材が子供の脳に悪い影響を与えているのか、お話しいたします。
コンビニ食が腐りにくいのはなぜか?
 前号で、真田中学で非行問題を起こしていた生徒の家庭ほど、コンビニ食に偏っていたお話しをしました。コンビニ店は、24時間営業であちこちにお店があって、私たちの生活になくてはならないものになっています。皆さん、コンビニ食による食中毒事件の報道って、記憶がないでしょう。なぜだか分かりますか?
 国の食品基準により、お店で売っている食品は36℃の環境下で2日間(48時間)腐らないように加工する義務付けが行われています。家庭で作った食品で、丸一日経過したものは食べませんよね。コンビニ店では作って2日経過しても、腐らないような加工がしてあり
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ます。コンビニのお弁当やおにぎりには、次亜塩素酸を混入させているのです。ところが、次亜塩素酸の表示義務がないために、皆さんはそれを知らないのです。 次亜塩素酸は、消毒用のキッチンハイターの主要成分で、細菌やウイルスを死滅させるものです。プールや水道水にも使われるカルキが次亜塩素酸です。水道水に使われる次亜塩素酸はごく微量ですが、健康を考える方は、水道水を沸騰させてカルキを飛ばして飲料水として飲む方もいますよね。
 実際のコンビニ弁当やおにぎりには、念入りに50℃の環境下で3日間(72時間)食品が腐らないようにするため、多量の次亜塩素酸が混入されています。次亜塩素酸は、明らかに人体にとって毒物です。コンビニ食を作っている従業員は、この事実を知っていますから、コンビニ食は絶対に食べないそうです。
 これに関連して、回転ずしのお話しもします。回転ずしでの食中毒事件の報道も聞かれませんよね。やはり、多量の次亜塩素酸を混入させているからです。こもれびカルテットのメンバーであるI君が、以前こんな話を私にしました。「H寿司はまだいいけれど、K寿司の寿司はかなりカルキ(次亜塩素酸)の味がして、やばいですよ」と。味に敏感な人には、回転ずしの寿司が体に良くないことが分かるんですね。子供が大好きで、回転ずしをよく利用している私には分かりませんが...
 家庭で作った食事がやはり一番安全なんです。キッチンハイターの混入した食品を、誰も好んで食べませんよね。特に脳が発達段階にあるお子さんには、腐らないような食品を与えてはいけない、腐る食品(次亜塩素酸の入っていない)を与えるべきです。もちろん、腐る前に食べないといけませんが。マスコミでは、こういった事実を国民に知らせる報道はしません。なぜなら食品業界にとって、生きるか死ぬかの企業存続に関わるデリケートな問題だからです。国も食品衛生管理上、食中毒を予防する観点で、食品に毒物を入れることを容認しているわけです。
できるだけパン食を控えましょう!
 真田中学の給食の改善での大きなポイントは、パン食を止めて、完全な米飯に切り替えたことです。お分かりになると思います。パンは健康に良くない食品なのです。2年前のすずらん新聞(第161、162号)で『グルテン過剰摂取警報』でも取り上げましたので、そちらもぜひお読みください。小麦に含まれているグルテンという物質(粘着力があって、食べ物をふわりとさせる成分)が、様々な病気の原因になっているのです。特に脳の働きに異常を来す病気、注意欠陥多動性障害・自閉症など子供たちの発達障害、うつ病、アルツハイマ
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ー型認知症、筋委縮性側索硬化症、パーキンソン病、統合失調症、てんかんなどです。欧米では、自閉症の子供たちに、グルテン除去の食事を指導し、症状の改善をはかることはもはや常識になっています。日本はあまりに遅れています。
 小麦で作られる食品は、たくさんありますよね。パンだけでなく、パスタ、うどん、ラーメン、そうめん、お好み焼き、タコ焼きなどで小麦は使われます。グルテン過敏症が明らかな方は、小麦の完全除去が必要ですが、そうでない方は取りあえずパンを止めるのが良いと思います。パンはグルテンの多い強力粉が使われ、様々な食品添加物が含まれているからです。麺類は塩程度で食品添加物が少なく、お好み焼きやタコ焼きも具以外はほぼ小麦(グルテンがやや少ない中力粉)です。健康のために止めるべきパンとは、食パン(サンドイッチも含む)、ロールパン、コッペパン、フランスパン、ピザ、ナン、ホットケーキなどです。砂糖がたくさん使われている、菓子パン、スナックパン、ケーキ、クッキーも、当然止めるべき食品です。女性の方、子供たちには気の毒ですが・・・こんなことを以前から話している私の家庭でも、パンは食卓に出てきます。私の場合、家庭円満のために、パンは少し食べて残すようにしています、ハイ。


牛乳は決して健康食品ではない、モー毒です!
 以前のすずらん新聞でも取り上げましたが、牛乳は決して健康食品ではありません。その時にお話ししたのは、カルシウム豊富が売り文句ですが、牛乳のカルシウムは小腸からほとんど吸収されず、かえって骨をもろくする作用があること、牛乳に含まれているホルモン(牛の赤ちゃんを育てる成長ホルモンや牛の女性ホルモン)が前立腺癌の発症を増やすという2点でした。
 食に関するセミナーからの情報で、さらに牛乳が体に良くないことが分かりました。まず、牛乳に含まれているホルモンが前立腺癌ば
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かりでなく、乳癌発症のリスクも高めています。牛乳をよく飲む女性に、乳癌が発症しやすいというデータが出ています。
 「母乳は白い血液」といわれるほど、血液の状態を反映しています。牛乳は、まさに牛の血液です。ところが、乳牛には遺伝子組み換えのホルモンが打たれ、穀物にも遺伝子組み換え穀物が使われ、さらに、乳腺炎の予防のために抗生剤が与えられています。このように多くの異物が与えられている不健康な牛から取れる牛乳が、人間の体にいいはずがありません。
 牛乳に含まれる乳蛋白質の約80%を占める「カゼイン」は、α型、β型、κ型の3種類があります。人間の母乳に含まれるのはβ型ですが、牛乳に含まれるのはほとんどがα型です。ですから、牛乳に含まれるα型カゼインは、人間の体内では消化されず、うまく吸収できないのです。牛乳を飲むと下痢になる人が多いのはこのためです。便秘の改善のために牛乳を飲む人がよくいますが、これは吸収障害を利用しているもので健康的な方法ではありません。α型カゼインを頻繁に摂取すると、小腸に未消化物がたまって腸内に炎症が起こり、さらに、消化できないα型カゼインは体内でアレルゲン(アレルギーの原因物質)と認識されるため、遅延型アレルギーの原因になります。蕁麻疹、喘息、花粉症などは原因物質を摂取後にすぐに症状が出現する即時型アレルギーですが、遅延型アレルギーは数時間、数日後に症状が出ます。小麦に含まれているグルテンと同様、カゼインは遅延型アレルギーによって、様々な病気の原因になりうるのです。海外では、発達障害のある子供にはグルテンを含む小麦、カゼインを含む牛乳を除去する食事療法が積極的に行われています。
牛乳の健康神話はどうやって作られたのか?
 昭和41年アメリカの小児科医スポック博士が著した育児書が日本で出版されました。世界43ヵ国語に翻訳され、総売り上げが5000万部という世界的な大ベストラー本でした。その本には、「生後3ヵ月での母乳からの断乳」「子供には牛乳や乳製品を積極的にとらせる」などの指導内容が書かれていました。日本でも、この内容が栄養士に教育され、母子手帳もこれを基盤に作られたため、常識化したのです。第1版が出版されて40年以上経過した昭和63年、スポック博士は第7版の改訂をしました。その改訂版では、6版まで「とるべ
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き」としていた牛乳・乳製品を「とるべきではない」として、菜食を推奨する内容になったのです。ところが、この第7版は日本では出版されず、その訂正内容は広く知られないまま、今日に至っています。皆さん、どう思われますか?混乱をきたしたくないという国家的な圧力があったのではないでしょうか?
 朝食をパンと牛乳にしているご家庭も多いかもしれません。小さなお子さんのご家庭では、ぜひとも朝食はご飯を主食にしてもらたいものです。将来、アルツハイマー型認知症、うつ病といった脳の病気を予防する意味でも、パンと牛乳は止めるべき食材だと思います。学校給食では、依然としてパンと牛乳が出されています。様々な抵抗は予想されますが、給食でのパンと牛乳を止めさせる啓蒙活動に取り組んでいきたいと考えています。
 自閉症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害などの発達障害の子供が急増しています。アトピー、喘息、食物アレルギーなどアレルギー疾患の子供も増えています。この二十数年の間に子供による犯罪の急増にも、目を覆いたくなるものがあります。以前、すずらん新聞142~144号『メディア媒体が脳を脅かす』で取り上げましたが、テレビ、ビデオ、テレビゲーム、インターネット、携帯電話なのメディア媒体も大きな要因でしょう。
 最近、『給食で死ぬ!!』というかなり過激なタイトルの本を読む機会がありました。また、食の安全性に関するセミナーを受ける機会にも恵まれました。今回は2~3回に渡って、『食が子供をむしばむ』というタイトルでお話しさせていただきます。
給食を変えたらいじめ・非行・暴力が消えた長野・真田町の奇跡!!
 前述した本の副タイトルです。著者は大塚貢(みつぐ)、長野県生まれで信州大学卒業、中学校教員、東京での会社員生活を経て、平成4年に真田町の中学校校長に赴任しました。当時の様子ですが、中学校校舎内外に落ちているタバコの吸い殻を集めると、1~2
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時間でバケツ1杯分になったそうです。生徒は授業を抜け出し、外で群れてタバコを吸ったり、弱い物をいじめて現金を巻き上げたり・・・さらには学校外で空き巣をしたり、一人暮らしのお年寄りの家に行って脅したりする生徒もいて、ひどい状態でした(あの名将を生んだ真田家の町とは思えませんよね)。この校長がまずやったのは授業の改革です。「先生方の授業を見せてもらったけれど、ひどいよ。あれでは給料泥棒だよ。」とゲキを飛ばし、お互いの授業を見せ合って「分かる、できる、楽しい授業」を目指して、教師に切磋琢磨させました。教師側の努力で授業は改善し、非行や不登校も少なくなりましたが、大塚校長は他にも原因があると考えました。
 各競技大会に同伴して、大塚校長が気づいたことがありました。お昼にコンビニ弁当やカップラーメンを食べている生徒がいたということです。そこで競技大会の朝、5時から会場近くのコンビニ前で張り込んで様子をうかがいました。すると、親子が次々と車で乗りつけて、コンビニ弁当、カップラーメン、菓子パン、清涼飲料などを購入していました。このような生徒の多くが、おしなべて非行問題を起こしたり、いじめる側であったり、キレやすく、学習に無気力といった子供だったのです。そこで大塚校長は、食の現状調査を行いました。生徒の38%が朝食を摂らずに学校に来ていました。朝食を摂っていたとしても、菓子
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パン、ハム、ウインナー、化学薬品で味付けされたジュースなど・・・夕食にはレトルトカレーや焼き肉が多いというデータでした。コンビニ食品による食生活で栄養が偏り、野菜不足により必要なビタミンも摂取できていない、朝食を摂らない、これでは酸素や栄養分を最も必要とする脳は正常に働くはずがありません。イライラし、無気力になり、非行に走ったり、勉強する気も沸かない・・・そこで、大塚校長はPTA会合を開いて、食の現状や食生活の重要性を説明しました。ところが、若いお母さん方、特に問題を起こしている子供の親御さんほど、まるで理解してもらえませんでした。
給食を変えるしかない!
 このような状況の中で、大塚校長は一大決心をしました。「家庭で難しいなら、学校で食を変えるしかない」と。それまでの給食というと、子供も教師も好きな「菓子パン」「揚げパン」がありました。さらに主食は、中華麺、スパゲッティ、ソフト麺などで、ご飯は1週間に1度程度、副食は肉が主流という状態でした。これでは、家庭と学校の食事がほとんど同じです。そこで、主食はご飯にして、さらに副食は魚や野菜たっぷりのものに変えようとしました。生徒の健康を憂慮していた栄養士のI先生が、給食の変革にさっそく取り組みました。魚臭いイワシの甘露煮を出した時には、保護者のみならず、教師からも猛反発にあったそうです。「校長、あなたが給食費を出してくれるなら好きにやってもらっていいが、給食費は私たちが出しているんだ!」「今度の校長は疫病神だ!」と。
 そんなある時、栄養士のI先生が、32歳の若さで心筋梗塞で亡くなった人の心臓の生体写真を借りてきて、教師と保護者、さらに子供達に見せました。動脈にコレステロールが付着し、まるで石膏のようでした。心臓の周りにもたくさんの脂肪が付着しているのが分かりました。大塚校長は、「若くして死にたいなら、今までのような食事にしとけ!」と言い放ちました。この出来事から、食の改善に理解を示す教師、生徒が増えていきました。そして、大塚校長は、1週間の5食すべてを米飯に切り替える決断をしました。
子供達が本を読みだした!
 少しずつ、やがてははっきりと変化が見えてきました。まずは「読書の習慣」です。荒れている時には、子供はとうてい本を読む気にはなりません。ところが、給食内容を変えてしばらくした頃、休み時間になると、子供達がみな図書室に行って、本を読むようになったのです。図書室にある120の椅子が瞬く間に生徒で一杯になり、椅子が満席になると、床に腰を下ろして読んだり、廊下に出ても読んでいま
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す。感動的な光景でした。図書館司書の先生の努力もあったのですが、給食の変革がもたらした成果でした。読売新聞社の「全国小中学校作文コンクール」でも、特に何の指導もしないのに、毎年のように全国で1位、2位に入選するようになりました。
 大塚先生は校長を退任後、教育長として生徒に花作りをさせたり、無農薬、低農薬の素材を使った給食を実現させ、非行ゼロを実現させています。
 皆さん、給食を変えただけでまさかと思うかもしれません。この本を読んで、今から40年前の私の中学校時代を思い出しました。私が宮田中学1年生に上がってすぐに、新校舎に移りました。そこでは、全学年が一同に会して昼食ができるフロアがあって、給食センターからの配給ではなく、隣接する厨房で昼食が作られ、主食が米食という長野県初の試みがなされました。当時、中高校生の非行が社会問題化してきた時代でした。近隣の中学でも非行による事件が聞こえてきましたが、宮田中学では非行問題は全くありませんでした。米食が脳を健全化していたのかなと感じています。
 次回も、現代の食生活がいかに子供たちの脳をむしばんでいるかをテーマにお話しします。
 前回号で3月からの道路交通法改正により、75歳以上の高齢運転者の認知症検査が強化されたお話をいたしました。先日、これに関する警察庁発表の報道がありましたので、
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ご紹介いたします。3月から5月末までに認知症のおそれがあると判定された高齢運転者は1万1617人に上り、そのうち1299人が医療機関を受診し、14人が免許停止となりました。また、3月から5月末までの75歳以上の運転免許の自主返納は5万6488件に上り、年間の自主返納は前の年と比べ大幅に増える見通しとなったようです。今後、高齢者による交通事故が減少に転じていけばいいですね。さて、今回は現在行われている認知症の治療、そして今後期待されている治療についてお話しいたします。
現在の認知症治療薬
 日本国内では現在、4種類の薬が認可されていますが、残念ながら認知症の根本的な治療薬ではなく、病状を遅らせるお薬です。2つのグループに分けられ、1つがア
セチルコリンエステラーゼ阻害剤です。アリセプト(ドネペジル)、レミニール、リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ(張り薬)の3つがあります。認知症では、脳内での神経伝達物質アセチルコリンが減少しているため、このアセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼという酵素を阻害することで脳内のアセチルコリンを増やし、認知機能を高めるお薬になります。副作用として嘔気や下痢などの消化器症状、興奮などの精神症状があります。張り薬では、貼付部位のかゆみや発赤などの皮膚症
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状があります。保険上適応となるのは、現在のところアルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症(アリセプトのみ)です。
 もう1つのグループに属するのがメマリーです。認知症患者の脳内では、異常な蛋白質によって神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰な状態になっています。メマリーは過剰なグルタミン酸の放出を抑えて、脳神経細胞を保護する働きがあります。副作用として、めまいやフラツキがあります。アリセプトとは作用機序が異なるため、アルツハイマー型認知症が中等症まで進行した時に、アリセプトにメマリーを併用するという治療も行われています。
薬物療法以外の認知症治療
 これらのお薬を使って、認知症の進行を抑えるというのが現在の治療の主流になっていますが、副作用により薬が使用できない場合もあります。認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」の段階から薬物療法を開始した方が予後良好と考えられており、実際の医療現場でも、早期に薬物療法を開始する場合が多いと思います。
 最近、国立長寿医療研究センターが発表した興味深い研究結果があります。認知症でない65歳以上の愛知県大府市の住民約4200人を4年間追跡したものです。国際的なMCI判定基準をもとに検査したところ、研究開始時点で約740人(18%)がMCIと判定されました。ところが、4年後に同じ検査を行うと、MCIだった人の46%が正常範囲に戻っていたというのです。MCIと判定されても、約半分の方が正常に戻ったということは、加齢以外の別の因子が働いたということだと思います。おそらく、MCIと判定された方々あるいはその周囲の人の働きかけで、脳活性化リハビリテーション(いわゆる脳トレ)が行われた結果ではないかと推察します。私の患者さんの中にも、副作用で薬物療法ができないアルツハイマー型認知症の患者さんで、病状があまり進行しない、以前よりも病状が良くなっている方が数人いらっしゃいます。脳活性化リハビリテーションが効果を上げているのでしょう。脳活性化リハビリテーションについては、また改めて取り上げたいと思っています。
開発中のアルツハイマー治療薬
 アルツハイマー型認知症の初めての治療薬アリセプトを開発したのは、日本の製薬会社エーザイです。アリセプトは前述した通り、認知症の進行を遅らせるいわゆる「対症療法」の治療薬でした。そのエーザイが今、3年後の2020年以降の販売に向けて準備を進めている2つの新薬があります。これらの新薬は、対症療法ではなく根本治療になるお薬として期待されています。
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 正常な脳から、アルツハイマー型認知症が発症するまでの過程の模式図を示します。鍵を握っているのが、「アミロイドβ」と呼ばれる蛋白質と、これが凝集してできる「アミロイドβフィブリル」という物質です。これが蓄積すると、脳に黒い斑点(老人斑)ができ、このアミロイドβフィブリルと老人斑が、神経細胞を殺していると考えられています。
 世界中の製薬会社は、左図に示した通り、脳にダメージを与える物質が生成される各過程に介入して、異常な物質の生成を抑える薬を開発しています。エーザイは、バイオベンチャーの米バイオジェンと共同でBACE阻害剤と抗アミロイドβプロトフィブリル抗体を開発しました。前者は治験の最終段階であるフェーズ3、後者はフェーズ2の状況です。これらの根本的な治療薬が登場すると、アルツハイマー型認知症を早期に発見し、早い段階から治療を始めれば、症状が深刻になる前に寿命を終えられる患者、つまり健康寿命の長い方々が増える可能性が出てきます。つまり、認知症患者を社会の「お荷物」から「稼ぎ手」に変えることができるかもしれません。
日本の国民皆保険を守ろう!
 私が医者になってから、色々な治療薬が出てきました。生活習慣病の治療薬、抗癌剤など、創薬により、多くの人々がその恩恵を受け、健康寿命を延ばしていると実感します。日本が世界に誇れる長寿国になっているのは、国民全員が平等に医療の恩恵を受けられる「国民皆保険」のお陰だと思います。この素晴らしいシステムを継続するためには、国民一人一人が節度をもって、医療保険を利用すべきでしょう。あちこちの医療機関を受診しまくる、医療保険を利用して様々な薬の投薬を医師に迫るなど、限りある医療財源を浪費するようなことは慎むべきと感じております。

 前回号では、①認知症とは?②認知症を疑ったらどうする?③認知症は誰もが避けられない、だから健康長寿を目指そう、といった内容をお話しいたしました。折しも先月4月下旬に京都市で認知症国際会議が開催されました。認知症は今や地球規模の問題になっています。社会が認知症患者とどう向き合っていくのかが話し合われました。認知症に優しい社会の実現には、当事者の視点が欠かせないという意見が多く出されたようです。今回は日本において、社会が認知症患者とどう向き合っているのか、また、今後どう向き合っていったらいいのか、などについてお話しします。
高齢者による交通事故の問題について
 皆さんご存知のように、高齢運転者による交通事故が相次いでいます。警察庁によると、日本全体では交通事故による死亡件数は減っています。ところが、75歳以上の高齢運転者による死亡事故件数の全体に対する割合は2005年7・4%であったのに対して、2015
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年では12・8%までに増えています(左図参照)。自動車大手各社ではここ数年、軽自動車を含む新車への衝突防止機能の搭載を加速させています。ただし、ほとんどの中古車には搭載されていないため、高齢者の手に届くほど十分に普及していないのが実情です。
道路交通法の改正について
 相次ぐ高齢者による交通事故が社会問題化したのを受けて、今年3月道路交通法が改正されました。従来は75歳以上の運転者は、3年に1度の免許更新時に認知機能検査を受けることが定められていました。新しい改正法では、免許更新時に加えて、信号無視や逆走など認知症の影響とみられる18項目で違反した場合も認知機能検査が義務付けられました。この検査では①「認知症のおそれがある」、②「認知機能の低下のおそれ」、③「認知機能の低下のおそれなし」の3段階に分類されます。①「認知症のおそれがある」と判定された場合は医師の診断を受けなければなりません。認知症と診断されれば、免許取り消しや停止となりますが、これは従来の法律と変わっていません。①で認知症と診断されなかった高齢者、②③の高齢者は、分類に応じて2時間から3時間の講習(実車指導、個別指導)を受けることになります。
新しい改正法の問題は?
 今回の改正法は認知機能をこまめにチェックする機会を設けたことが特徴で、一定の効果が期待されています。一方で、医師側からは心配の声が上がっています。対象範囲が拡がったことで、診察数が増え、ただでさえ認知症を専門とする物忘れ外来は予約がいっぱいなのに、対応できなというわけです。また、認知症でないと診断された高齢者が事故を起こした場合、刑事上の責任はないものの、民法上の責任を問われる可能性があるからです。私自身も患者さんから運転免許更新の相談を何件か受けたことがありますが、その方の生活に関わることでもあり、社会的な責任もある事柄であるため、認知症専門医に紹介させていただいています。
 日本では、認知症と診断されれば一律免許取り消しとなりますが、オーストラリアのビクトリア州では、認知症の人でも実際に運転してもらうなどして個々の能力を判断し、運転を認めている所もあります。日本でも初期の認知症であれば、一人一人の運転技量等を確認し、運転の可否を総合的に判断する仕組み作りの構築を求める声が上がっています。一方で、日本の社会では依然として「認知症の方は危ない行動をするに違いない」という思い込みも根強くあり、なかなか難しい問題かと思います。
全国に広がる「認知症カフェ」「認知症サポーター」
 2015年政府は「認知症の人やその家族の視点の重視」などを理念とする国家戦略として「新オレンジプラン」を発表しました。その柱となっているのが「認知症カフェ」です。「オレンジカフェ」とも呼ばれますが、常設の店舗ではなく、自治体やNPO法人などが開催する交流の場になっています、現在、全国で2000カ所以上あります。私が10年来往診を続けている認知症で寝たきりのYさんのお宅では、1年半前からこの「認知症カフェ」を個人で始めています。Yさんの介護をずっと続けている娘さんは、「認知症とどう向き合えばいいか悩んでいる家族は多いです。同じ境遇だからこそ分かりあえるし、助言もできるし、支え合うことができます。」と話していました。
 先月京都で開催された認知症国際会議で日本から発表されたのが「認知症サポーター」です。恥ずかしながら、私も新聞記事で今回初めて知りました。十二年前に厚生労働省が始めた、認知症を正しく理解し、偏見を無くすための取り組みです。認知症の症状や本人への接し方、場面に応じた支援の方法について学ぶ約九十分の無料講座を受講すると、認知症サポーターと認定されます。日本ではこれまでに、自治体や職場などで約26万5千回の講座が開かれ、約883万人のサポーターが生まれているそうです。日本発の認知症サポーターは世界にも広がり、日本はじめ十一カ国で活動が行われています。認知症の家族がいなくても、認知症患者に優しい社会を作っていくため、認知症サポーターがどんどん広がっていけばいいですね。皆さんも受講してみませんか。お問い合わせは、「全国キャラバン・メイト連絡協議会」TEL03‐3266‐0551になります。
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2025年問題にどう向き合っていくのか?
 あと8年後の2025年には、団塊の世代が一斉に75歳以上になります。国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類が経験したことのない超・超高齢化社会となります。10人に1人が認知症という時代がすぐそこまで来ています。日本は3年後の東京オリンピックで大いに盛り上がることでしょう。ですがその後、若者が減り老人が増え、物作り日本を支えてきた生産人口は大幅に減り、介護や葬儀に携わる人が激増する、まさに国全体が老境化する状況が心配されています。どうすればいいのでしょうか?認知症が誰でもなる病気であるならば、自立を望む当事者には必要なサポートをして働いてもらう、加えて、介護離職者を増やさないような柔軟な働き方を実現していく働き方改革が必要になります。日本が認知症に負けないために大切なのは、認知症患者を社会のお荷物と考えるのではなく、社会の担い手の一員であるという認識を持つことではないでしょうか。
 次回は、今期待されている認知症の治療についてお話しいたします。
 クリニックを開業してこの4月で十六年目を迎えました。開業当初より通院してくれているMさんという九十一歳の男性の方がいらっしゃいます。背筋がすっと伸びていて、声もしっかりされていて、七十歳でも通るような若々しい方です。Mさんは診察の度に「すずらん新聞はいい。いつも楽しみで読ませてもらっている。」と誉めてくれます。4月の初めに受診された時「先生、今度は認知症のことを書いてくれや。」と言われました。何度か認知症のことはこの新聞でも取り上げているのですが、Mさんの頼みとあっては断れません。『認知症と向き合う』と題して、3回に渡ってお話したいと思います。
認知症とは? 認知症を疑う症状は?
 外来で七十歳以上の患者さんともなると「最近、人の名前が出てこなくなった。物の置き忘
れが多くなった。認知症が心配だ。」という声を聞きます。そんな時によく行うのが欧米では標準的な認知症スクリーニング検査であるMMSEです。Mini-Mental State Examinationの略称で、言語性設問の他に、紙を折る問題や文章や
認知症①.jpgのサムネール画像図形を書く問題などの動作性の設問があります。総計11問で30点満点になっています。24点以上で正常と判断します。MMSEに加えて、頭のCT検査も行います。ほとんどの場合、MMSEは合格点で、頭のCT検査では年齢相応の委縮がある程度で、認知症とは診断されない、
いわゆる加齢に伴う物忘れと診断する場合が多いです。MMSEが23点以下で、頭のCT検査で萎縮が目立ったり、小さな脳梗塞の跡が多発している場合は認知症を疑い、専門医に紹介することになります。
 認知症とは「脳の病変によって、記憶を含む複数の認知機能が後天的に低下し、社会生活に支障をきたすようになった状態」です。人の名前がなかなか出てこないくらいは心配ありません。ところが、自分が体験したことそのものを忘れてしまうという状態は、本人にとってその体験は存在しない、つまりヒントがあっても思い出せないことになるので、認知症が疑われます。記憶障害の他に大切なポイントは、その人らしさが失われたかどうかという点です。以前は問題なくできていた仕事や家事がうまくこなせなくなった、通い慣れた道なのに迷うことがある、身だしなみを気にしなくなった、などです。
 新しい事が覚えられないので、日常的に同じことを繰り返し聞いてくる。物をしまった場所を忘れるので、探し物が多くなり、やがて誰かが盗ったという妄想へとつながりやすくなります。やる気を失って、うつ状態になる場合もありますし、においに鈍感になる点も前兆として大切です。
 認知症の初期には、本人は戸惑いや不安を自覚することが多く、何とか取りつくろって、その場を切り抜けてしまうことが多いです。相手の話に合わせて「そうそう、それだった」などと思い出したふりをする場合もあります。ですから、電話での応対では多少やり取りに不自然なところがあっても、それなりにしっかりした会話ができてしまいます。認知症を初期に見つけるには、数日一緒に生活してみて、自分の目で色々を確かめることが大切です
認知症を疑ったらどうすればいいか?
 私が定期的に診ている患者さんの家族から、時々「最近物忘れが多く、認知症が心配だ」とこっそり連絡があります。この場合は、受診した際に「何々さん、お歳もお歳だし、脳の働きもチェックした方がいいから、ちょっと検査しておこうかね」とお話して、前述したMMSEと頭のCT検査を行います。このパターンは大丈夫です。ところが、日頃かかりつけ医がなく、自分の親に認知症が疑われた場合は、ちょっとやっかいになります。たいていの親は、自分の子供に「認知症では?」と言われれば怒り出すことが多いからです。親としてのプライドがあるから当然と言えば当然です。だからと言って、本人にごまかして認知症専門の医療機関に連れて行った場合、初期であればあるほど、認知症の人はすぐにだまされたことに気づき、その後はどんなに説得しても病院には行かない可能性があります。家族との信頼関係が崩れ、家庭内では家族を攻撃するような悲惨な状況になることもあります。
 どうすればいいのでしょうか。いきなり認知症専門の医療機関に連れていくようなことはせず、近場の開業医の先生のところに健康診断という口実で受診してもらって、認知症の検査も合わせてやってもらうというのがいいかと思います。そこで、認知症が疑われれば、改めて専門の医療機関に紹介してもらう、これが無難な方法かと思います。そういった意味で、定期的にかかるような病気がなくても、風邪などをひいた時に面倒をみてもらう、かかりつけ医を作っておくことは大切といえると思います。
誰もが認知症からは避けられない!
 ちょうど1年前のすずらん新聞第169号『認知症予防と健康長寿のツボ~前編~』でも取り上げました。2012年での認知症患者は462万人でしたが、今から8年後
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の2025年には認知症患者は約1・5倍の700万人になると推計されています。認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)を加えると、約1300万人となり、65歳以上の3人に1
人は認知症患者とその予備軍となるわけです。日本を代表する神経内科医で、東京女子
医科大学名誉教授の岩田誠医師は「人間には二通りの生き方しかない。認知症になるまで長生きするか、その前に亡くなるか。」と。長生きしたいなら、できるだけ認知症の期間を短くして、
健康長寿を目指すしかないわけです。そこで、私が提案したのが『認知症予防と健康長寿のツボ五箇条~長寿遺伝子を活性化させる生活を~』です。詳しくは第169号、170号を参考にしていただきたいと思います。
 次回は、認知症患者の増加に伴う社会的な問題を取り上げてみたいと思っています。



 前回は緊張型頭痛、片頭痛についてお話しいたしました。今回は新しい疾患概念『脳過敏症候群』を取り上げます。私自身も今回、頭痛の勉強をし直して初めて知った疾患名です。私の診ている患者さんの中にも、この病態に当てはまるような方もいらっしゃると思いましたので、紹介したいと思います。
『脳過敏症候群』とは?
 2011年、東京女子医科大学脳神経外科の研究チームが、頭痛に関する長年の臨床経験から提唱した、頭痛の診断の新しい考え方です。
 脳過敏症候群は、片頭痛などの一般的な頭痛もちの患者さんが、長期間くり返し鎮痛剤を使い続けるなどの不適切な対応を続けることで、引き起こされます。反対に、「頭痛なんか病気じゃない、がまんしていれば治るはず」と何の治療もせずに放置していても引き起こされます。日本では欧米に比べると頭痛を病気として認識していない方が多く、慢性的な頭痛があるのに医療機関を受診しないケースが多いようです。
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 脳過敏症候群の症状としては、耳鳴り、めまい、難聴の他に、不眠症状、不安感、抑うつ感などがあります。物忘れが激しくなる、イライラして攻撃的になる、奇行を繰り返すというケースもあります。また、認知症、うつ病、パニック障害だと思われていた人が、実は脳過敏症候群だったというケースもあるようです。
 私が診てきた患者さん、特に女性に多いのですが、前記のような症状があって、頭のCTやMRI検査でも異常がなく、耳鼻科で診てもらっても特に異常を言われないという患者さんがこの病態に当てはまるのではないかと思っています。
脳過敏症候群の原因
 一般的に、片頭痛の痛みは、年齢を重ねるとともに減弱していくことが多いです。片頭痛は、脳の血管が異常に拡張して、血管周囲にあるセンサーの役目を果たしている
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三叉神経への刺激が元になり、大脳が興奮することが原因で起こります。ところが、中高年になると、脳の血管は動脈硬化を起こし、異常な血管拡張が起こりにくくなります。そのため、三叉神経への刺激情報を伝わりにくくなって、痛みが減弱するというわけです。
 しかし、痛みが減弱しても大脳の興奮が鎮まったわけではありません。片頭痛の度に大脳が興奮を繰り返すと、後頭葉や側頭葉、さらには視床という感覚の中枢から、小脳というめまいや平衡感覚に関連した部位にその刺激情報が繰り返し伝えられます。結果として、脳の各部位は正常に働かなくなり、前述したような脳過敏症候群の症状が引き起こされると考えられています。
脳過敏症候群の診断
 どの診療科を受診しても、「原因がわからない」「不定愁訴」などといわれ、たらい回しにされ、症状を抑えるための薬を次々に処方されてきた患者さんが多いようです。そうした症状も脳の過敏性の高さによるものだと分かれば、適切な治療も可能です。
 まず、大切なのはこれまでの症状や経過などをきちんと聴取する問診です。次に症状に応じて、頭のCT検査、MRI検査を行って、他の病気でないかを調べる除外診断が必要です。その上で、脳過敏症候群が疑われた場合は、脳波検査を行います。脳波検査は、覚醒時と時に睡眠時の記録をそれぞれ20分程度行います。あらゆる周波数の光刺激を行い、後頭葉からの刺激波が脳のどのあたりまで波及するかを観察し、診断していきます。
 南信地区で、こういった診断ができるのは、日本頭痛学会認定頭痛専門医のいる昭和伊南総合病院脳神経外科や、瀬口脳神経外科病院になります。自分が脳過敏症候群ではないかと思われる方は紹介いたしますので、お申し出ください。
脳過敏症候群の治療
 脳過敏症候群の治療は、根本にある脳の興奮を鎮め、過敏さを和らげていく薬物療法が基本になります。抗てんかん薬、抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)などを投与し、まず、脳の興奮を抑えます。脳の興奮が鎮まると、一時的に本来の頭痛発作が出ることもありますから、その際は前号で紹介したトリプタン製剤を服用します。元の片頭痛発作が頻回になることはないそうです。
 慢性的な頭痛に悩んでいても、医療機関を受診せず、市販の頭痛薬で対処している方が多いかと思います。月に1~2回程度の頭痛発作であれば問題ありませんが、10回以上の発作がある方は、医療機関を受診しましょう。また、「薬を飲まずにがまん!」という対応は、さらに問題です。過去にそのようなことをしていて、耳鳴り、めまい、難聴、不眠、不安感などの症状がある方は、脳過敏症候群に移行している可能性があります。医師にご相談ください。
 クリニックでは、頭痛の訴えで来院される患者さんをよく見かけます。脳腫瘍ではないか、脳出血ではないかと気にされる患者さんには、頭部CT検査を行います。脳に何か異常があることはほとんどありません。開業して十五年になりますが、脳腫瘍が見つかったのはわずかに2例のみです。頭痛については今から十一年前、第52号『頭痛もちは三千万人』というタイトルでこの新聞で取り上げました。最近の知見も交えて、今回と次回の2回に分けて頭痛をテーマにお話しします。
 現在の日本では、いわゆる"頭痛もち"と呼ばれる方は約四千万人に及んでいます。そのうち7~8割が『緊張型頭痛』、2割が『片頭痛』です。もう一つの『群発頭痛』を合わせて、頭痛もち三兄弟といいますが、群発頭痛は年間で1万人に1人という発症頻度です(私は出合ったことはありません)。今回は、一般的な前二者を取り上げます。
ストレスが引き起こす『緊張型頭痛』
 緊張型頭痛は頭痛もちの7~8割を占めます。中高年に多く、女性にも男性にもよくみられる頭痛です。後頭部から首筋にかけて痛むことが多いですが、頭全体や鉢巻き
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様に痛むこともあります。痛み方は、頭を締め付けられような圧迫感、緊迫感、頭重感が特徴で、「鉢巻きをしているような」、「帽子をかぶされているような」、「頭に重石をのせられているような」感じになります。めまいやフラツキ、目の疲れ、全身のだるさを伴うこともあります。頭や首の周りの筋肉のコリ、精神の緊張から起こる頭痛で、頭痛の頻度は月に数回から毎日と様々です。午後から夕方4時くらいにかけて増強する傾向があります。片頭痛が発作的に起こるのに対して、緊張型頭痛はいつとはなしに始まり、だらだらと持続します。片頭痛は「夕立」、筋緊張型頭痛は「梅雨空」のような頭痛とたとえられます。
 緊張型頭痛は筋肉の緊張が原因の頭痛ですので、マッサージや入浴、運動によって症状の軽快が得られます(片頭痛では逆に増悪します)。肩こりや、あごの痛みや開口障害のみられる顎関節症を伴うこともしばしばです。緊張型頭痛は、精神的なストレスや身体的なストレスの両方が誘引になって起こります。ストレスにより頭の回りの筋肉が緊張すると、筋肉の血液の流れが悪くなり、乳酸やピルビン酸といった老廃物が貯まってコリの状態となり、痛みを起こすようになります。この痛みがさらに血流を悪くしたり、ストレスを助長するため悪循環に陥り、頭痛がだらだらと続くことにもなります。一日中コンピュータに向かう仕事をする人などでは、首や頭の回りの筋肉に負荷がかかり、この身体的なストレスも頭痛を引き起こします。ゲームやスマートフォンの普及とともに、若年層でも緊張型頭痛が増えているようです。枕が高すぎることも緊張型頭痛の原因になります。
緊張型頭痛の薬物治療
 痛みを緩和させるための鎮痛剤を用いるほか、筋肉の過剰な緊張をゆるめる筋弛緩薬(テルネリン、ミオナール)や抗不安薬(エチゾラム、セルシンなど)が用いられます。鎮痛剤は服用し過ぎると、胃腸障害や肝機能障害を起こすことがありますので、注意が必要です。筋弛緩薬や抗不安薬は眠気の副作用が出ることがあります。また、抗うつ薬を使って、痛みの閾値をアップさせ、痛みの過敏さを和らげる治療が有効なこともあります。日頃から、首や肩、背中が張ってきたら、体を動かして筋肉の緊張を解きほぐして、頭痛に至らせないようにすることが大切です。
女性に多い『片頭痛』
 『片頭痛』というくらいですから、頭の片側が痛むことが多いのですが、実は両側が痛むことも少なくありません(4割で両側が痛む)。頭の片側のこめかみから眼のあたりが痛み、ひどくなると頭全体が痛みます。後頭部が痛む片頭痛もあります。頭表面を走っている血管が腫れて痛む頭痛のため、脈が打つように「ズキンズキン」、「ガンガ
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ン」といった頭痛になります。「頭の中に心臓があるようだ」と訴える患者さんもいます。痛みがひどくなると脈打つ感じではなく、持続的な痛みとなります。片頭痛の半分の患者さんでは拍動感を感じません。
 片頭痛は女性に多く(男性の4倍)、生理や排卵に関連して現れることが多く、妊娠中には逆に頻度が少なくなります。思春期ころから多くなり最盛期は30歳代で、60歳を過ぎると少なくなります。月に数回、夕立のように発作的に起こります。日常生活に支障を来たすような痛みで、寝込んでしまう患者さんも多いと思います。階段の昇降、入浴などの日常的な動作、運動、首や肩のマッサージなどにより頭痛が増悪するのが片頭痛の重要な特徴です。発作は4時間から72時間持続し、しばしば吐き気や嘔吐を伴います。光や音に敏感になるのも特徴です。光がまぶしくなり、周囲の音や声が頭にガンガン響くため、発作中は暗い静かな所を好みます。片頭痛の20%では「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる前兆が現れることがあります。視界にチカチカした光(閃輝)が現れ、これが拡大して元のところが見えにくくなります(暗点)。閃輝暗点は20~30分続き、これが終わるころから頭痛が始まります。
チョコ①.jpg 片頭痛の誘因は人によって様々です。ストレスは有力な誘因ですが、ストレス中は血管が緊
張しているため頭痛は起こらず、ストレスから開放された時に血管が緩んで片頭痛が起こります。ストレスが開放される週末になると片頭痛が起こり、楽しみをフイにしてしまうこともあります。血管を緩めるチョコレート、ワインなどのアルコール、チーズ、柑橘類、ナッツなどの飲食物も誘因になります。血管を拡げる高血圧や狭心症の治療薬も片頭痛を誘発します。人ごみや騒音、まぶしい光なども原因となります。
 こういった誘因が顔面や頭部を支配している知覚神経『三叉神経』を刺激します。すると、三叉神経の終末部から痛みの原因物質が血管に放出され、この物質が血管の拡張と炎症を招き、頭痛が起こるわけです。
片頭痛の薬物治療
 片頭痛の発作時に欠かせない薬がトリプタン製剤(マクサルト、ゾーミック、イミグランなど)です。痛みだけでなく、脳の興奮を抑える片頭痛の特効薬です。服薬のタイミングが大切です。生あくび、肩こり、光・音・においに敏感になる、吐き気がするなどの予兆症状や、閃輝暗点の前兆があったら、すぐに服用します。予兆や前兆がない場合は、痛み始めたら早めに服用しましょう。片頭痛の場合、痛みがピークになってからの内服では、特効薬と言えども効きません。まずは1錠服用して、それでも十分な効果がなければ、2時間以上間隔をあけて、もう1錠服用します。トリプタン製剤は値段が高く、3割負担で1錠あたり200円から300円です。ですが、発作のたびにトリプタン製剤で脳の興奮をきちんと取り去れば、将来の脳過敏症候群(次号でお話しします)への移行を防げます。それを考えますと、トリプタン製剤による治療は大切ということになります。

 

油の摂り方変遷.jpg「油」というと少量でもカロリーが高く、摂り過ぎると脂肪蓄積の原因となる印象がありますよね。私も診察の場面で、血糖や中性脂肪が高めの方には、「甘いもの、油ものを控えめにして、繊維物をしっかり摂りましょう」と話すことが度々です。実際には「油」には体に良い油と悪い油があり、積極的に摂るべき油もあることを知っておく必要があります。どんな健康本にも積極的に摂取すべき油として紹介されるのが、青魚に多く含まれるEPAやDHAです。今回は、『「海の油」と「陸の油」のお話し』というタイトルで、積極的に摂るべき油、控えるべき油を整理します。
「海の油」と「陸の油」
 「油」というと灯油やガソリンなどの燃料油も含まれてしまいますよね。実は生命に関わる油は「脂質」と呼ばれます。コレステロールが高い状態を、以前は高コレステロール血症と呼んでいましたが、今は脂質異常症と呼ぶようになっています。なぜかと言いますと、コレステロールには悪玉のLDLコレステロールと、善玉のHDLコレステロールの2種類があって、HDLコレステロールが低い状態は体にとって良くないのですが、高コレステロール血症ではこの病態を表現できないからです。
 さて、脂質を構成しているのは「脂肪酸」という物質で、脂質は脂肪酸の種類によって、いくつかに分類されています。基本的には常温で固まる油が「飽和脂肪酸」、常温で固まらない油が「不飽和脂肪酸」と呼ばれます。以前は、飽和脂肪酸が動脈硬化を進行させ、不飽和脂肪酸が動脈硬化を予防すると言われていましたが、現在ではこれは間違いであることがわかっています。実は、飽和脂肪酸の一種である「中鎖脂肪酸」が、今、認知症予防の救世主として注目されています。ココナッツオイルやココナッツミルクに含まれている中鎖脂肪酸については、次号で紹介します。一方のヘルシーと言われてきた「不飽和脂肪酸」ですが、大きく「オメガ3系脂肪酸」「オメガ6系脂肪酸」「オメガ9系脂肪酸」の3種類に分かれています。青魚に多く含まれるEPAやDHAは「オメガ3系脂肪酸」に属しこれらが「海の油」です。一方、豚肉や鶏肉、植物由来の油に多く含まれるアラキドン酸は「オメガ6系脂肪酸」に属しこれが「陸の油」になります。この一般の人に分かりやすい油の分類を提唱しているのが、百歳健康法でおなじみの白澤卓二先生です。
「海の油」と「陸の油」のバランスが決め手!
 日本人の魚の消費量は1970年代から増えています。健康長寿のために魚を食べた方がいいいことが分かり、多くの人が意識して魚を摂るようになったにも関わらず、脳卒中や心筋梗塞の発症率は一向に下がりません。なぜでしょうか?それをよく示している上のグラフをご覧ください。上の棒グラフを見ると、魚の脂質(海の油)の摂取量は、1970年代からわずかながらも増えています。一方で植物性脂質と動物性脂質(陸の油)の摂取量は1970年代から急速に増えています。下の折れ線グラフをご覧ください。総脂肪に対するEPAの推定比が1950年代からぐっと下がり、それに半比例する形で、脳梗塞や虚血性心疾患の死亡率が上昇しています。つまり、日本人は魚の油はそれなりに摂取しているのですが、それ以上に陸の油を過剰に摂取しているため、脳や心臓の血管をボロボロにさせてしまっているというわけです。
心筋梗塞.jpg血管の炎症を引き起こす「陸の油」
 サラダ油、コーン油、ベニバナ油、ナタネ油などの植物性の油ですが、その名前からか体には良いものというイメージを持っている方が多いかと思います。実は、これらの植物性の油はオメガ6系脂肪酸であるリノール酸やγリノレン酸を多く含んでおり、酸化するとアラキドン酸に変化するのです。アラキドン酸は、過剰に摂取すると血管の炎症を招き、血栓ができやすくなります。豚肉や鶏肉にもアラキドン酸が多いのですが、これら肉の油と植物性の油は成分としては同じ性質のものだという認識が必要です。植物性の油は炒め物や揚げ物に使われたり、加工食品に利用されています。肉をそれほど食べていなくても、炒め物、揚げ物や加工食植物油.jpg品を頻繁に食べていると、植物性の油、つまり陸の油を過剰に摂取することになり、体には害になってしまいます。炒め物や揚げ物には、陸の油であっても性質の違うオメガ9系脂肪酸に属するオリーブオイルや、次号で紹介するココナッツオイルを上手に利用するのがいいと思います。
牛肉、豚肉、鶏肉どれがいい?
 肉には牛肉、豚肉、鶏肉などがあります。さて、どの肉を多く摂取するのがいいのでしょうか?最近、サーロインステーキなどを好んで食べる人は長生きするから、魚より肉を食べた方がいいんだとマスコミや本で主張する人がいます。豚肉や鶏肉にはアラキドン酸が多いのですが、牛肉にはあまり含まれていません。その点では、牛肉を好んで食べる方に元気な方が多いのは、アラキドン酸の少ない良質な蛋白質を摂取しているからだろうと推察されます。かと言って、肉より魚の方が体にいいと考えるのは間違っています。
 豚肉にはビタミンB群が豊富ですし、鶏肉は牛肉に比べてコレステロールが少ないといういい面もそれぞれあります。牛肉、豚肉、鶏肉のどれが一番いいといっても、順番はつけられないかと思います。3つの肉をバランスよく摂るのがいいのでしょう。ただ調理する際に用いる油には前述したような注意が必要です。肉を食べる時にはできるだけ、しゃぶしゃぶにしたり、湯通しして、油を使わない調理をすることも大切でしょう。
「海の油」EPA・DHAを積極的に摂取しよう!
 EPAは血液をサラサラにして、血栓ができるのを防ぐ働きがあります。一方、DHAは脳の炎症を抑えたり、脳の働きを良くする働きがあります。また、EPA・DHAともに炎症を抑えたり、免疫力を高めたり、脂質代謝を改善する作用もあります。EPA・DHAは体内では合成されないため、食品からしか摂取できない、いわゆる必須脂肪酸です。日頃から、EPA・DHAを多く含んでいる食材、魚介類や海藻を積極的に食事に取り入れて下さい。特に、まぐろ、さんま、さば、いわし、あじ、かつお、ぶりなどに多く含まれています。魚の油の成分ですので、油の乗ったものの方がより豊富に含まれています。ただし、EPA・DHAは、熱に弱く酸化しやすいので、調理方法としては生で食べるお刺身が最適といえます。
サバ②.jpg お魚が苦手だったり、自宅で調理するのが面倒という方はどうしたらいいでしょうか?EPA・DHAを多く含む魚以外で、オメガ3系脂肪酸が豊富な食品があります。オメガ3系脂肪酸には、αリノレン酸という体内で消化・分解されてEPAやDHAになる脂肪酸があります。αリノレン酸を多く含む油には、エゴマ油、亜麻仁油、インカインチオイル(サチャインチという植物を原料とするオイル)、チアシード(南米原産の種子)などがあります。これらを加熱しないように上手に料理に取り入れて、オメガ3系脂肪酸を摂取すると良いでしょう。

アイス.jpgのサムネール画像 前号の新聞を発行してから、三人の女性の患者さんから次のような話がありました。「先生、困るわあ。私、パンやパスタやアイスクリーム大好きなのに。どうしたらいいの?」一人の方は「先がそんなに長くないし、私は大好きなパンを食べ続けるわよ」と仰っておりました。昔、食品関連の会社を立ち上げた高齢の男性の方からは、「あの記事を読んで、私はパンを食べるのを一切やめましたよ。家内は食べ続けていますが・・・」反響の大きさに驚いていますが、そのグルテンの話題で今回もお話しいたします。デイビット・パールマスター著『いつものパンがあたなを殺す』(三笠書房)、副題として「脳を一生、老化させない食事」とありますが、内容がやや難しく、かなり過激なので、内容をかみ砕いてソフトにして紹介させていただきます。
血糖を急激に上昇させる食品とは?
 前号では、現代人は炭水化物を過剰に摂り過ぎていて、それが糖尿病を始めとする生活習慣病を生んでしまっているというお話しをしました。ここで、著者が医療関係者に講演する際に、4種類の食べ物のスライドを見せてから質問するというお話を紹介します。その4種類の食べ物とは、①全粒小麦パン、②チョコバー、③精白糖大さじ一杯、④バナナです。質問は「もっとも血糖を急増させる食品は?」です。皆さん、どう思いますか?③の精白糖だと思う方パン②.jpgのサムネール画像が多いかと思います。医療関係者でも正解される方はほとんどいないそうです。
 ここでグリセミック・インデックス(GI値)を紹介します。GI値とは、ある食べ物を食べた後に、血糖値がどのくらい急激に上昇するのかを計測した数値です。GI値はゼロから100までの範囲で、血糖を急激に上昇させる食べ物ほど高い値になります。純粋なブドウ糖のGI値を100としています。さて、前述の4種類の食品で、一番GI値が高いのが①全粒小麦パン(GI=71)です。意外に思いますよね。その他、高い順に言いますと、③精白糖(GI=68)、④バナナ(GI=56)、②チョコバー(GI=55)となります。精白小麦で作ったパンのGI値も71で、全粒小麦なら体にいいと考えるのはやめるべきのようです。
 著者は、「現代人にグルテン過敏症が増える理由は、今日の加工保存食品に含まれる多量のグルテンにさらされているばかりではなく、糖質(炭水化物)、炎症を促進する食べ物(マーガリン、ショートニングなどのトランス脂肪酸の多い食品)、環境有害物質(空気や土壌や水に含まれる体に悪影響を与える微量な物質)を過剰に摂取している結果でもある。現代人の脳においては、特に最悪の状況を生み出している。つまるところ、炭水化物は、私たちの体に害をなす成分の源なのだ。」と述べています。
「脂肪を蓄積せよ」という遺伝子
 前号で紹介しましたように、古代人は食事のうち7割を脂肪から摂取していました。脂肪は人間の代謝にとって好適な燃料であり、人間の進化のすべてを支えてきました。だからこそ、私たちは過去二○○万年に渡って、高脂肪の食事をしてきました。その後、わずか一万年ほど前に農業が行われるようになって初めて、食料として炭水化物が豊富に供給されるようになったに過ぎません。私たちはいまだに高脂肪の食事で生き抜いてきた狩猟採集民族の遺伝子を持っています。いわゆる「倹約遺伝子」です。長期におよぶ食糧不足に備えて、食料が豊かな時に脂肪を蓄えるように、体内にそのメカニズムが組み込まれています。この倹約遺伝子のおかげで、人間は食料が十分ある時に太ることができ、食料不足に備えることができました。
 その後、食べ物が手に入れやすくなった時代においても、倹約遺伝子はなおも活発に働いています。この倹約遺伝子の指示を無視するように人間が進化するには、これから四万年から七万年かかるといわれています。倹約遺伝子は、やってこないであろう飢饉に備えさせ、現代人に肥満を蔓延させ、糖尿病の患者を多くしています。さらに、現代人は炭水化物を過剰に摂取していますので、脂肪蓄積に拍車をかけているといえるでしょう。
脳が静かに燃えていくという恐怖炎②.jpgのサムネール画像
 炎症といえば、蜂に刺されたところが痛むとか、風邪を引いて喉が痛いとか、膝や肘の関節が痛むとか、といったイメージがあります。こういった時に血液検査をすれば、炎症の程度を表すCRP値が上昇したり、白血球数が上昇したりといったことが起こっています。こういった炎症は体感できますし、客観的に数値として目に見えてきます。この本では「脳の炎症」という言葉が頻繁に出てきます。私もどういうことか最初イメージができませんでした。著者は、脳炎とか脳脊髄炎といった急性のものではなく、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん、自閉症、うつ病といった慢性的な脳の病気に起こっている、静かに燃えている「炎症」として説明しています。脳には体の他の部分と違って、痛みを脳②.jpgのサムネール画像感じる受容体がありませんので、人間は脳の炎症を感じることができない、だからこそ恐怖なのだと述べています。そして、この脳の炎症に深く関わっているのが、炭水化物やその一つであるグルテンの過剰摂取なのだ、という事がこの本の一番の主張になっています。様々な研究データが示されていますが、紙面の都合上、ここでは割愛します。
炭水化物、グルテンを抑えた食事を考えよう!
 欧米では日本と違ってパンが主食ですので、グルテン過敏の方が多いことは予想されます。日本の食品ではグルテンの有無の表示はありませんが、米国では今や当たり前で、ごく普通の食料品店でも「グルテンフリー製品」の品ぞろえは豊富のようです。過去数年で、米国で販売されたグルテンフリー製品の総額は爆発的に上昇し、業界全体では2011年に約6300億円を達成し、なおも上昇を続けているそうです。このグルテンフリー食品への関心は、皆さんもご存じの世界ランキング1位のテニスプレイヤー、ジョコビッチ選手の話が火を付けました。彼は、2011年からグルテンフリーの食事を取り入れ、その後まもなく世界ナンバーワンに登りつめたのです。
 話が変わりますが、私が小学校時代、学校給食で出された主食はコッペパンでした。宮田中学校に上がってまもなく、新しい校舎に移転し、そこで給食は教室ではなく、全校生徒が一同に食堂に会して食事をするようになりました。その頃から、米食が取り入れられるようになったと記憶しています。この本の訳者、白澤卓二先生はあとがきで次のように述べています。「五十代の方は、学校給食で出されたコッペパンから始まって、パンを暴力的に浴びて育ち生きてきました。脳の働きをよくし、認知症を防ぐというこの二つの課題を同時にこなさなければならない五十代になっても、相変わらず炭水化物中心の食生活を続けていたら取り返しがつきません。」と。
 五十代の方に限りませんが、パン、麺類、パスタ、焼き菓子類、シリアルなどグルテンが豊富な炭水化物食品は控えめにしたらいかがでしょうか。朝食がいつもパン食の方なら、米食に変えるのもいいかもしれません。グルテン過敏でなければ、グルテンフリー食にする程のことはないと思いますが、脳を守るという意味で、食生活を一考する必要はあるかと思います。
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